『線は、僕を描く』あらすじと感想|2020年本屋大賞3位の青春小説をAudibleナレーター白石兼斗さんの朗読で聴く
著者:砥上裕將/ナレーター:白石兼斗/出版社:講談社(Audible版:Audible Studios)
こんにちは、ひよりです。今回ご紹介するのは、砥上裕將さんの『線は、僕を描く』。
水墨画という珍しい世界を題材に、喪失を抱えた大学生の再生を描いた、2020年本屋大賞3位の青春小説です。
白と黒だけで表現される水墨画の美しい描写に、休憩中に聴いていたつもりが、その世界にすっかり引き込まれる時間が続きました。
ナレーターの白石兼斗さんの朗読とあわせて、じっくりレビューしていきます。
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線は、僕を描く
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『線は、僕を描く』のあらすじ
両親を不慮の事故で失い、深い喪失感の中で「真っ白」になってしまっていた大学生・青山霜介。前に進めないまま淡々と日々をやり過ごしていた彼は、親友の古前に頼まれたアルバイトで訪れた絵画展の設営現場で、一枚の水墨画と運命的に出会います。白と黒のみで表現されたその作品は、霜介の目に色鮮やかに広がり、彼の閉ざされていた世界を一変させました。
そこで声をかけてきたのは、水墨画の巨匠・篠田湖山。絵筆を握ったこともない一介の法学部生であるにもかかわらず、霜介はなぜか湖山に見初められ、一方的に内弟子にされてしまいます。それに反発するのが、湖山の孫娘であり実力者の篠田千瑛。彼女は一年後の「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言します。まったくの素人だった霜介は、戸惑いながらも水墨の道へと踏み出し、線を描くことを通して物事の本質と向き合い、少しずつ自分自身を取り戻していきます。
本作は、現役の水墨画家でもある砥上裕將さんが、2018年に『黒白の花蕾』のタイトルで第59回メフィスト賞を受賞したデビュー作。改題の上刊行され、2020年本屋大賞で第3位を獲得しました。2022年には横浜流星さん主演で映画化もされ、幅広い層から愛されている一冊です。
ひよりの感想
正直に言うと、水墨画という馴染みのない題材に、聴き始める前は少し身構えていました。ですが、実際に聴いてみると、その心配はまったくの杞憂でした。筆の運びや墨の濃淡、線を引くときの張り詰めた空気感が、音声で聴いているだけなのに鮮やかにイメージとして浮かんできて、休憩中に聴いていたのに、その世界にすっかり没入してしまう瞬間が何度もありました。
著者が現役の水墨画家だからこそ書ける、線を描く際の身体感覚や美学の描写には、圧倒的な説得力があります。「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」という湖山先生の言葉をはじめ、師匠や兄弟子たちの言葉の一つひとつに深い含蓄があり、水墨画のことだけでなく、生き方そのものについて考えさせられました。
喪失を抱えた霜介が、水墨画と、そして人との出会いを通して少しずつ再生していく過程は、まさに王道の青春小説。派手な展開があるわけではないのに、霜介が一本の線を描くたびに、彼の心が少しずつ動いていく様子に胸を打たれました。読み終えた(聴き終えた)あと、静かで温かい感動が長く残る一冊です。
ながら読書ポイント
水墨画の丁寧な描写を味わえる作品なので、休憩中や移動中など落ち着いて聴ける時間帯がおすすめです。霜介の成長を追う構成で、区切りよく聴き進めやすい一冊です。
著者・砥上裕將さんのプロフィール
| 生年 | 1984年生まれ |
| 出身 | 福岡県 |
| 本業 | 水墨画家 |
| デビュー | 2018年『黒白の花蕾』(改題前タイトル)で第59回メフィスト賞を受賞。2019年『線は、僕を描く』として刊行しデビュー |
| 主な受賞・候補歴 | 第59回メフィスト賞(『線は、僕を描く』)/2020年本屋大賞3位 |
| 主な作品 | 『線は、僕を描く』『七色の風』『常設展示室』など |
砥上裕將さんは、福岡県出身の水墨画家です。お年寄りの趣味と思われがちな水墨画の魅力を、小説を通して広い世代に伝えたいという志のもと、『線は、僕を描く』を書き上げました。温厚でおだやかな人柄で、ウイスキーやジャズ、そして猫を心から愛する作家としても知られています。
本業が水墨画家であるという経歴は、本作の最大の強みになっています。線を引く際の臨場感や身体感覚、そして水墨画に込められた美学や哲学は、砥上さん自身の体感に根ざしているからこそ書き得たもの。それが読者を未知の興奮へと導くエンターテインメントの言葉となって表現され、水墨画という題材でありながら、多くの読者を惹きつける極上の読書体験を生み出しています。デビュー作にして本屋大賞3位、映画化まで果たした本作は、砥上さんの名を一躍知らしめた代表作です。
ナレーター・白石兼斗さんのプロフィール
| 生年月日 | 1993年4月26日 |
| 出身 | 山口県 |
| 所属事務所 | 81プロデュース |
| 経歴 | 山寺宏一さんに憧れて声優を志し、2014年の第8回81オーディションで特別賞を受賞 |
白石兼斗さんは、山口県出身の男性声優です。名優・山寺宏一さんに憧れて声優の道を志し、81プロデュースのオーディションで特別賞を受賞して所属となりました。アニメ『神之塔 -Tower of God-』など、幅広い作品で活躍しています。
本作のように、主人公の心情の機微や、水墨画をめぐる師匠・兄弟子たちの含蓄ある言葉を丁寧に届ける必要がある作品において、落ち着きと誠実さを感じさせる白石さんの声質はよく合っています。喪失を抱えた霜介が少しずつ前を向いていく心の変化を、繊細な表現力で読み上げており、水墨画の世界の静謐な空気感を聴き手に丁寧に伝えてくれます。
よくある質問
Q. 『線は、僕を描く』はどんな作品ですか?
両親を失った大学生・青山霜介が、水墨画との出会いを通して喪失から再生していく姿を描いた砥上裕將さんの青春小説です。2020年本屋大賞で3位を獲得しました。
Q. 水墨画の知識がなくても楽しめますか?
はい。水墨画に触れたことのない人にもわかるよう丁寧に描写されているため、予備知識がなくても十分に楽しめます。むしろ聴き終える頃には水墨画に興味が湧いてくる作品です。
Q. 「ながら読書」向きの作品ですか?
霜介の成長を追う構成で区切りよく聴き進められますが、水墨画の丁寧な描写を味わうには落ち着いて聴ける時間帯がおすすめです。
Q. Audible版のナレーターは誰ですか?
声優の白石兼斗さんが朗読を担当しています。
まとめ
『線は、僕を描く』は、水墨画という奥深い世界を通して、喪失からの再生を静かに描いた砥上裕將さんの傑作青春小説。白石兼斗さんの丁寧な朗読が、霜介が一本の線を描くたびに動いていく心を、繊細に届けてくれます。ぜひ「ながら読書」で、その静かな感動に触れてみてください。


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