アルプス席の母

本屋大賞

「これはもう、ただの高校野球小説じゃない——母親の物語だ。」
早見和真さんの『アルプス席の母』を聴き終えて、最初に出てきた言葉でした。グラウンドに立つ息子を「アルプス席」から見守る、シングルマザーの3年間。涙腺が緩むだけじゃない、人生の重さと愛おしさが詰まった一冊です。Audibleで河井春香さんの朗読を聴いていると、まるで自分が菜々子としてアルプス席に座っているような感覚に包まれます 🎧

📚 本の基本情報

  • タイトル:アルプス席の母
  • 著者:早見和真
  • 出版社:小学館
  • 発売:2024年3月15日(単行本)
  • ページ数:354ページ
  • ナレーター:河井春香
  • ジャンル:青春小説/家族ドラマ
  • 主な実績:第21回本屋大賞 第2位(2025年)
  • 個人評価:★★★★★(5.0 / 5.0)

あらすじ

主人公はシングルマザーの秋山菜々子。神奈川で看護師として働きながら、ひとり息子の航太郎を育てています。早くに夫を亡くし、母と息子で支え合って生きてきた親子。

幼い頃から野球一筋の航太郎は、湘南のシニアリーグでエースとして活躍。関東一円の強豪校からスカウトが殺到する逸材でした。しかし、彼が選んだのは大阪の野球部の歴史が浅い新興校。声をかけてくれなかった甲子園常連校・山藤学園を倒すことを夢見て、覚悟の進学を決めます。

息子を支えるため、菜々子もまた慣れない大阪へ拠点を移すことを決意。そこから始まったのは、想像をはるかに超える「球児の母」としての3年間でした。

厳しい父母会の掟。膨大な遠征費と寄付金。激痩せしていく息子。理不尽な親同士の人間関係。そして、エースとして期待されながら肘を痛めて野手転向を余儀なくされる航太郎の挫折……。

グラウンドの「息子」と、アルプス席の「母」。
甲子園を目指すのは、選手だけじゃなかった。

果たして、ふたりの夢は叶うのか——。母と子、それぞれの「闘い」を描いた、まったく新しい高校野球小説です。

著者・早見和真さんについて

『アルプス席の母』を書いた早見和真(はやみ・かずまさ)さんは、ジャンルを軽々と越境する実力派の作家です。

1977年、神奈川県横浜市生まれ。桐蔭学園高校時代は硬式野球部に所属し、自身も本物の高校球児でした。本作のリアリティの源は、まさに自身の経験から来ているのです。

2008年、自らの高校野球時代をモチーフにした『ひゃくはち』で作家デビュー。映画化もされた人気作です。その後、人間ドラマ・ミステリー・スポーツものなど多彩なジャンルで活躍しています。

早見和真さんの主な作品

  • 『ひゃくはち』(2008年)— 補欠球児の青春を描いたデビュー作。映画化
  • 『イノセント・デイズ』(2014年)— 第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞
  • 『店長がバカすぎて』(2019年)— 第17回本屋大賞ノミネート
  • 『ザ・ロイヤルファミリー』(2019年)— 第33回山本周五郎賞・JRA賞馬事文化賞ダブル受賞
  • 『八月の母』(2022年)— 「〜の母」シリーズの一作目
  • 『笑うマトリョーシカ』(2023年)
  • 『アルプス席の母』(2024年)— 本屋大賞2025 第2位

球児を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。「選手」から「母親」へと視点を変えた『アルプス席の母』は、早見さんが満を持して挑んだ集大成的な一冊と言えるでしょう。

執筆にあたっては、実際の球児の母たちに取材を重ねたとのこと。だからこそ、父母会のリアル、寄付金の実態、親同士の人間関係などが、フィクションとは思えないほど生々しく描かれています。

ナレーター・河井春香さんの朗読が「菜々子そのもの」

Audible版『アルプス席の母』を最高の体験にしているのが、ナレーターの河井春香(かわい・はるか)さんです。

河井春香さんのプロフィール

  • 生年月日:1978年6月11日生まれ
  • 出身地:大阪府
  • 所属:東京俳優生活協同組合(俳協)
  • 職業:女優・声優・ナレーター

河井さんは、舞台女優としてのキャリアもあり、「あかとき」「チェリーナイト」「桜散る、散るもつもるも三春乃一座」などに出演。ゲーム『ファイナルファンタジーXIII』ではジル・ナバート役のモーションキャプチャを担当するなど、活動の幅は多彩です。

『アルプス席の母』の朗読での河井さんの魅力は、何と言っても「母親の感情の機微」を表現する繊細さ。神奈川出身の菜々子が、大阪の慣れない父母会で奮闘するシーン、息子の故障に胸を痛めるシーン、甲子園のアルプス席で必死に応援するシーン——どの場面も、聴いていて息ができなくなるほどの没入感です。

そして特筆すべきは、大阪出身の河井さんならではの関西弁のリアルさ。父母会の母たちの大阪弁、菜々子の親友・かすみさんの言葉、監督や球児たちの会話——耳から聴くからこそ味わえる「本物感」があります。

Audibleで聴くときのポイント

  • 🎧 速度は1.0倍がおすすめ(感情描写を味わいたいので等倍がベスト)
  • 🎧 試合シーンは特に集中して聴きたいので、家事より散歩や移動中向き
  • 🎧 泣ける場面が多いので、人前ではご注意を(電車で号泣しかけました)
  • 🎧 高校野球の知識がなくても全く問題なし。むしろ「親の物語」として聴いてほしい
  • 🎧 終盤に向かうほどボリュームが上がるので、最後はじっくり腰を据えて

聴いた感想

① 「球児の親」のリアルが衝撃的

恥ずかしながら、本作を聴くまで「高校野球の親って大変なのかな?」程度の認識でした。それが、聴き始めて数時間で「これ、ほぼ仕事じゃん……」と驚愕。

父母会の階層構造、当番制、寄付金、遠征の手配、応援グッズの準備、選手の食事サポート……。球児の母は、もうひとつのフルタイムの仕事を抱えているようなものです。シングルマザーの菜々子が、看護師の仕事と両立させながら大阪に拠点を移してまでやり遂げる姿に、何度も胸が熱くなりました。

② 菜々子と航太郎の親子愛にじんわり泣ける

本作の本当の主役は、母と子の関係です。互いを思いやりながらも、不器用にぶつかり合うふたりの姿に、自分の親子関係を重ねた読者は多いはず。

特に印象的だったのは、河川敷で交わされる親子の会話シーン。寮生活で離れて暮らすからこそ、たまに会えた時間の重さ。「ありがとう」が言えない年頃の息子と、つい過保護になりそうな母——その距離感の絶妙さがたまりませんでした。

③ 「アルプス席」というタイトルの秀逸さ

「アルプス席」とは、甲子園球場の応援席のこと。主役のグラウンドからは少し離れた、見守る場所です。

このタイトル、本当に秀逸。母親は試合に出ているわけじゃない。でも、確かに「闘っている」。物理的な距離があっても、心は同じ場所にいる。アルプス席という言葉に、親としての立ち位置のすべてが詰まっています。

④ 終盤の展開で号泣必至

序盤〜中盤は「大変だなあ」という感想でしたが、終盤に近づくにつれて感情がどんどん揺さぶられていきます。特にラスト30分は、感動の波が押し寄せて止められませんでした。

「人生はゴールじゃない。続いていく」というメッセージが、こんなにも胸に響く小説は珍しい。子を持つ親だけでなく、かつて誰かの子だったすべての人に響く物語です。

⑤ 河井春香さんの朗読が完璧

大阪出身の河井さんは、関東出身の菜々子と、大阪弁の父母会・友人たちを完璧に演じ分けます。「アルプス席で叫ぶ菜々子の声」が、私の脳内では完全に河井さんの声で響いています。これはAudibleで聴く価値が本当に高い一冊です。

項目別の評価

項目 評価 コメント
ストーリー ★★★★★ 母子の3年間を見事に描き切る
キャラクター ★★★★★ 菜々子も航太郎も愛おしい
リアリティ ★★★★★ 球児の親の世界が衝撃的
朗読 ★★★★★ 河井さんの演技が完璧
感動 ★★★★★ 終盤は涙腺崩壊注意

🎯 こんな方におすすめ

  • ✓ 親子の絆を描いた感動小説が好きな方
  • ✓ 子育て中・子育てを終えた親世代の方
  • ✓ かつて部活動に打ち込んだ経験がある方
  • ✓ 高校野球が好き、または興味がある方
  • ✓ シングルマザーの奮闘記に共感したい方
  • ✓ 早見和真『ひゃくはち』『八月の母』が好きだった方
  • ✓ 泣ける本を探している方

まとめ|「見守る愛」の尊さに気づかせてくれる一冊

『アルプス席の母』は、「親であること」「子であること」の意味を、改めて考えさせてくれる物語でした。

主役はグラウンドに立つ航太郎ではなく、アルプス席で見守る菜々子。「主役じゃない人生も、確かに尊い」——本作はそんな当たり前のようで忘れがちな真実を、優しく、力強く教えてくれます。

大阪出身の河井春香さんの朗読で聴くと、菜々子の感情がそのまま胸に流れ込んでくるよう。本屋大賞2025で第2位を獲得した話題作を、ぜひAudibleで体験してみてください。

聴き終えたら、きっとあなたも自分の親に電話をかけたくなるはず。あるいは、子どもの背中をそっと抱きしめたくなるはず。そんな温かい余韻が残る一冊です ⚾🌟

Audible会員なら聴き放題対象作品。初めての方は30日間無料体験で試せます。アルプス席の母を、ぜひこの機会に。

Audibleで聴いてみる

投稿日:2026年5月
— ひより —

コメント

タイトルとURLをコピーしました