カフネ

本屋大賞

「あなたがいると、きっとおいしい」
このひと言が、こんなにも沁みる小説に出会えるなんて。阿部暁子さんの『カフネ』は、誰かに作ってもらった温かいごはんが、傷ついた心をそっと癒してくれる物語。Audibleで岸本百恵さんの優しい朗読を聴いていると、まるで自分も誰かに手料理を振る舞われているような、不思議な癒やしを感じます 🎧🍚

📚 本の基本情報

  • タイトル:カフネ
  • 著者:阿部暁子
  • 出版社:講談社
  • 発売:2024年5月22日(単行本)
  • ナレーター:岸本百恵
  • 再生時間:約10時間31分
  • ジャンル:人間ドラマ/再生の物語
  • 主な受賞歴:2025年本屋大賞 大賞・第8回未来屋小説大賞・第1回「あの本、読みました?大賞」
  • 個人評価:★★★★★(5.0 / 5.0)

「カフネ」というタイトルの意味

本題に入る前に、まずこの美しいタイトルについて。「カフネ(cafuné)」とはポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」を意味します。

言葉では表現しきれないほどの深い愛情、慈しみ、いたわり——そんな感情を内包した美しい言葉。物語のラストとも深く呼応する、まさに本作の核心を表すタイトルなのです。

あらすじ

主人公は東京法務局に勤める41歳の野宮薫子(のみや・かおるこ)。何度も挑戦した不妊治療が報われず、夫から離婚を切り出されてひとり暮らしになっていた彼女に、さらなる悲劇が襲います。最愛の弟・春彦が、29歳の誕生日を祝ったばかりで急死してしまったのです。

悲しみに沈み、酒浸りの荒んだ生活を送る薫子。そんな彼女のもとに、弟が遺した遺言書が届きます。そこには「元恋人にも財産を分けてほしい」という意外な記述が——。

遺志に従い、弟の元恋人・小野寺せつな(29歳)と会うことになった薫子。しかし、現れたせつなは無愛想で愛想がなく、薫子は憤りを感じます。疲労がたたってその場で倒れてしまった薫子を、せつなは自宅まで送り届け、温かい手料理を振る舞ってくれたのでした。

久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく薫子。せつなは、自身が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の仕事を手伝わないかと薫子に提案します。

食べることは、生きること。
ふたりの「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく——。

年齢も性格も真逆のふたりが、「食」と「家事」を通じて少しずつ距離を縮めていく、心温まる再生の物語です。

著者・阿部暁子さんについて

『カフネ』を書いた阿部暁子(あべ・あきこ)さんは、岩手県出身・在住の作家です。

2008年、『屋上ボーイズ』(応募時タイトル『いつまでも』)で第17回ロマン大賞を受賞してデビュー。以来、人間関係の機微や、誰かを思う優しさ、前向きに生きようとする強さを描いた作品を発表してきました。

阿部暁子さんの主な作品

  • 🍚 『屋上ボーイズ』(2008年)— 第17回ロマン大賞受賞のデビュー作
  • 🍚 『どこよりも遠い場所にいる君へ』
  • 🍚 『また君と出会う未来のために』
  • 🍚 『パラ・スター〈Side 百花〉』『パラ・スター〈Side 宝良〉』— 車いすテニスを題材にした感動作
  • 🍚 『金環日蝕』
  • 🍚 『カラフル』
  • 🍚 「鎌倉香房メモリーズ」シリーズ— ライトノベル系の人気シリーズ
  • 🍚 『カフネ』(2024年)— 講談社からの初の単行本にして本屋大賞受賞

本作は、編集者からの「疑似家族ものを書いてみてはどうか」という提案から生まれたとのこと。最終的に「亡くなった男性の姉と、その元恋人」というユニークな関係性を軸に選んだことが、この物語の独自性を生み出しました。

阿部さんの作品に共通するのは、誰かを思う優しさと、前向きに生きようとする強さ。『カフネ』はその集大成とも言える、講談社からの初単行本にして2025年本屋大賞大賞を受賞した会心の一作です。

ナレーター・岸本百恵さんの朗読が物語を深める

Audible版『カフネ』を最高の体験にしているのが、ナレーターの岸本百恵(きしもと・ももえ)さんです。

岸本百恵さんのプロフィール

  • 生年月日:7月26日生まれ
  • 出身地:兵庫県
  • 血液型:A型
  • 身長:155cm
  • 所属:ケンユウオフィス
  • 特技:関西弁(播州弁)
  • 趣味:献血、カラオケ、ジャズダンス、ゲーム
  • デビュー:2012年

岸本さんは、アニメ・吹替・ナレーションと幅広く活躍する実力派の声優。『SPY×FAMILY』『BEASTARS』『キャロル&チューズデイ』『サザエさん』などのアニメ作品にも出演されています。海外ドラマの吹替では『POWER』『FARGO/ファーゴ』『ARROW』なども。

『カフネ』の朗読での岸本さんの魅力は、何といっても登場人物それぞれを丁寧に演じ分ける表現力。冷静で理性的な薫子と、ぶっきらぼうだけど芯のあるせつな、二人の対照的な性格を見事に表現しています。

「ナレーターの方、福丸百貨店の方でしたねとても聞きやすかったし、きちんと演じ分けができていて心地よく聴けました」というレビューが多く寄せられているのも納得。家事代行で出会うさまざまな依頼人たちの声も丁寧に演じ分け、物語の世界に深く入り込ませてくれます。

Audibleで聴くときのポイント

  • 🎧 速度は1.0倍がおすすめ(料理の描写を味わうには等倍がベスト)
  • 🎧 食事のシーンが多いので、空腹時はご注意を(必ずお腹が空きます笑)
  • 🎧 家事をしながら聴くのにぴったりの一冊
  • 🎧 約10時間半なので、1週間ほどでじっくり聴き終えられる
  • 🎧 後半、思わぬ展開もあるので感情の準備をして聴いてください

聴いた感想

① 「食べること」が「生きること」だと体感する

この小説の最大の魅力は、食事のシーンの描写力です。せつなが作る料理は、特別な食材を使った豪華なものではありません。でも、相手の体調や気持ちを慮って作られた一皿一皿が、聴いているこちらにも「食べたい」「温まりたい」と思わせる力を持っています。

傷ついた心と体に、温かい食事がどれだけの力をくれるか——日常的な行為の中に、こんなにも深い意味があったのかと気づかせてくれました。

② 薫子とせつな、対照的な二人の関係性

本作の核は、年齢も性格も真逆の薫子とせつなの関係性です。最初はお互いを煙たがっていた二人が、家事代行の仕事を通じて少しずつ理解を深めていく過程が本当に丁寧。

恋人でも家族でもない、けれど確かに大切な存在になっていくふたり。「カフネ」という言葉が表すような、言葉にできない深い結びつきが生まれていく様子に、読みながら何度も涙しました。

③ 「ほのぼの」だけじゃない、人生の重さ

表紙やあらすじからは「ほのぼのとした癒やし系」を想像していましたが、実際はもっと深く、痛みも描いた物語でした。

不妊治療、離婚、突然の家族の死、生きづらさ……。誰もが抱えうる「人生の痛み」が真正面から描かれます。でもそれを乗り越えていく姿は、決して説教くさくなく、読者をそっと支えてくれる優しさに満ちています。

④ 家事代行で出会う人々のエピソード

カフネの依頼者として登場する人々——子育てに疲れた母親、味覚障害を抱える人、人生に行き詰まった人……それぞれが抱える事情が、丁寧に描かれます。

料理や掃除といった「日々の小さな行為」が、いかに人を救うのか。家事は決して「誰でもできる軽い仕事」じゃない——本作を通じて痛感しました。

⑤ 「カフネ」というタイトルに込められた愛

聴き終えた今、なぜタイトルが「カフネ」なのかが心に染みます。言葉では言い表せない、繊細で深い愛のかたち。それは家族の愛にも、友情にも、人と人とのあらゆる結びつきにも宿っているものでした。

「カフネ」のような関係を、自分の人生にもひとつでも持てたら——そう願わずにはいられない一冊です。

項目別の評価

項目 評価 コメント
ストーリー ★★★★★ 静かで深い、再生の物語
キャラクター ★★★★★ 薫子とせつなの関係性が秀逸
食事描写 ★★★★★ 必ずお腹が空きます
朗読 ★★★★★ 岸本さんの演じ分けが見事
余韻 ★★★★★ 聴き終えた後も心に残る

🎯 こんな方におすすめ

  • ✓ 心温まる人間ドラマが好きな方
  • ✓ 「食」をテーマにした物語が好きな方
  • ✓ 喪失や悲しみからの「再生」の物語に惹かれる方
  • ✓ 疲れた毎日に癒やしを求めている方
  • ✓ 本屋大賞作品をチェックしたい方
  • ✓ 阿部暁子さんの作品をまだ読んだことがない方(入門にも◎)
  • ✓ 静かに泣ける小説を聴きたい方

まとめ|「誰かに作ってもらうごはん」の温かさを思い出す一冊

『カフネ』は、派手な事件も劇的な展開もないけれど、心の奥に深く沁みる物語でした。

誰かに作ってもらった温かいごはんを食べたとき、人は無条件に大切にされている気がする。そんな当たり前のようでいて、忘れがちな真実を、阿部暁子さんの筆と岸本百恵さんの朗読が、優しく思い出させてくれます。

2025年本屋大賞受賞も納得の傑作。疲れた夜、ひとりで聴いてみてほしい一冊です。きっと聴き終わる頃には、誰かに会いたくなったり、何か作って食べたくなったり、自分の人生をもう一度大切にしたくなったり——そんな静かな力が、あなたの中に灯っているはずです 🍚🌟

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Audibleで聴いてみる

投稿日:2026年5月
— ひより —

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