「少なくとも最後まで歩かなかった」
これは、世界的な小説家・村上春樹さんが自身の墓碑銘にしたいと語る言葉。長年走り続け、世界各地でフルマラソンやトライアスロンに出場してきた村上さんが、「走ること」と「書くこと」を通して自分自身を綴った画期的なメモワール(回顧録)です。Audibleで大沢たかおさんの落ち着いた朗読で聴くと、まるで村上さんと並走しながら、彼の人生哲学に耳を傾けているような濃密な時間が流れます 🎧🏃
📚 本の基本情報
- タイトル:走ることについて語るときに僕の語ること
- 著者:村上春樹
- 出版社:文藝春秋
- 発売:2007年10月15日(単行本)/2010年6月10日(文庫版)
- Audible配信開始:2023年12月22日
- ナレーター:大沢たかお
- ジャンル:エッセイ/メモワール(回顧録)
- 個人評価:★★★★★(5.0 / 5.0)
本書について:「メモワール」という新しい形
本書を読むうえで大切なのは、これは「小説」ではなく「エッセイ集」であるということ。さらに村上さん自身は、本書を「メモワール(回顧録)」と呼んでいます。
小説家として、ランナーとして、ひとりの人間として——「彼自身」を初めて説き明かした画期的な一冊なのです。
もし僕の墓碑銘なんてものがあるとしたら、
“少なくとも最後まで歩かなかった”と刻んでもらいたい。—— 1982年の秋、専業作家としての生活を開始したとき路上を走り始め、以来、今にいたるまで世界各地のフルマラソンやトライアスロンに出場し続ける村上春樹のメモワール。
本書の内容
1982年、29歳で書いた『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞し作家デビューした村上春樹さん。経営していたジャズ喫茶を畳んで「専業作家」として生きていこうと決意した秋の日、彼はある決断をしました——「走り始めること」です。
以来、村上さんはほぼ毎日走り続け、年に1度はフルマラソンに出場、トライアスロンにも挑戦する「走る小説家」となりました。本書では、その「走ること」と「小説を書くこと」の深い相関性が、独特の村上節で語られていきます。
本書で語られる主なテーマ
- 🏃 専業作家になった日のこと——なぜ走り始めたのか
- 🏃 世界各地のマラソン体験記——ニューヨーク、ボストン、ホノルル、ギリシャなど
- 🏃 1996年に走った100kmウルトラマラソン——人生最大の試練
- 🏃 小説家であることと、走ることの共通点——孤独・忍耐・継続
- 🏃 年齢を重ねること——50歳を超えても走り続ける意味
- 🏃 トライアスロンへの挑戦と挫折と再挑戦
- 🏃 創作の秘密——なぜフィジカルな経験が文章を生むのか
本書の魅力は、「走る」というシンプルな行為を通じて、人生のあらゆる側面が照らし出されていくこと。健康法でも自己啓発でもなく、一人の小説家が淡々と自分自身と向き合った記録です。だからこそ、読む人それぞれが自分の人生に重ねて読むことができる、稀有な一冊になっています。
著者・村上春樹さんについて
説明不要かもしれませんが、村上春樹(むらかみ・はるき)さんは、現代日本を代表する小説家であり、世界40カ国以上で作品が翻訳されている国際的作家です。
村上春樹さんのプロフィール
- 生年月日:1949年1月12日
- 出身地:京都府京都市(兵庫県西宮市育ち)
- 学歴:早稲田大学第一文学部卒業
- デビュー:1979年『風の歌を聴け』で第22回群像新人文学賞
- 特記:ノーベル文学賞候補の常連
早稲田大学在学中に結婚し、卒業後は東京・国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を経営。1978年、神宮球場でヤクルト対広島戦を観ていた時に「小説を書こう」と思い立ったエピソードは有名です。翌1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。
1982年、ジャズ喫茶を畳んで専業作家になったとき、走ることも始めました。本書はこの時期から書き始められた、いわば「小説家・村上春樹の半生記」でもあるのです。
村上春樹さんの主な作品
- 📖 『風の歌を聴け』(1979年)— デビュー作・群像新人文学賞
- 📖 『ノルウェイの森』(1987年)— 累計1,000万部超の大ベストセラー
- 📖 『ねじまき鳥クロニクル』(1994-95年)— 読売文学賞
- 📖 『海辺のカフカ』(2002年)— 世界20カ国以上で翻訳
- 📖 『アフターダーク』(2004年)
- 📖 『1Q84』(2009-10年)— 社会現象を巻き起こした長編
- 📖 『騎士団長殺し』(2017年)
- 📖 『街とその不確かな壁』(2023年)
世界的に評価される作家でありながら、本書ではあくまで「ひとりのランナー」「ひとりの人間」として、自分の弱さも強さも赤裸々に綴っているのが本作の最大の魅力。普段の小説では見られない、村上春樹という人物の素顔が垣間見える貴重な一冊です。
ナレーター・大沢たかおさんの朗読が完璧
Audible版『走ることについて語るときに僕の語ること』の素晴らしさを支えているのが、ナレーターの大沢たかお(おおさわ・たかお)さんです。
大沢たかおさんのプロフィール
- 生年月日:3月11日
- 出身地:東京都
- デビュー:1994年ドラマ「君といた夏」で俳優デビュー
- 主な受賞:2004年 映画「解夏」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞
大沢さんは、日本を代表する実力派俳優のひとり。『JIN-仁-』『キングダム』シリーズの王騎将軍役、『岳-ガク-』『深夜特急』『ICHI』『風が強く吹いている』など数々の名作で主演を務め、その低音で深みのある声と知的な存在感で多くのファンを持ちます。
大沢たかおさん自身のコメント
朗読を担当した大沢さんは、本作についてこう語っています:
「村上春樹さんは雲の上の人だと思っていましたが、この作品を読んで、村上春樹さんのようなすごい人でも些細なことで悩むことがあるということに気づき、励まされたと同時に優しい気持ちになれました。人間って愛おしいと感じられる作品でした。
朗読する際、村上春樹さんがご自身の弱さも強さも赤裸々に書かれているので、僕が情感を演出したり、変に声をつくったりするのではなく普段の自分の感覚を意識しながら行いました。一生懸命生きている人に聴いて欲しい作品です。
耳で聴くことで脳の奥深くに響く感覚があり、僕はAudibleで気に入った作品は何回も聴いています。」
このコメントから分かるように、大沢さんの朗読は「演じる」のではなく「自然に語る」スタイル。それが村上春樹さんの淡々とした文体と、見事に呼応しているのです。「演じない」朗読だからこそ、村上春樹さん自身の声で語られているような不思議な臨場感が生まれます。
Audibleで聴くときのポイント
- 🎧 速度は1.0倍がベスト(大沢さんの低音と間合いを味わうため)
- 🎧 走りながら聴くのが最高のシチュエーション!村上春樹も推奨
- 🎧 通勤・散歩中にもぴったり。エッセイなので途中で区切りやすい
- 🎧 心が疲れた夜、静かな部屋でじっくり聴くのもおすすめ
- 🎧 ランニング初心者・経験者問わず、人生のヒントが詰まっています
聴いた感想
① 「走る」が「生きる」のメタファーになる
本書を聴いて最も心に響いたのは、「走ること」が「生きること」そのもののメタファーとして描かれていること。マラソンを走り続ける村上さんの姿は、創作と向き合い続ける小説家の姿と完全に重なります。
「走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのを止めるための理由なら大型トラックいっぱい分はある」——この言葉は、何かを続けているすべての人に刺さる名言です。仕事、子育て、勉強、人間関係……どんな「継続」にも当てはまる普遍的な真実がここにあります。
② 村上春樹さんの「素顔」に触れられる
本書の何より素敵なのは、世界的大作家・村上春樹さんが「ひとりの人間」として弱さも強さも見せてくれていること。50代に入って体力の衰えを実感する場面、ウルトラマラソンで「壁」にぶつかる場面、トライアスロンで挫折する場面——普通の人間としての村上さんが、ここにいます。
大沢さんが「すごい人でも些細なことで悩むことがある」と語った通り、本書を読むと村上春樹がぐっと身近に感じられるのです。
③ 大沢たかおさんの朗読が「黄金タッグ」
大沢さんの「演じない朗読」は本書に完璧にマッチしています。低音で穏やかな声、過剰な抑揚のない自然な語り、ふと挟まれる優しい間合い——「これがもし村上春樹さん自身の朗読だったら、こんな感じだろうな」と思わせる説得力があります。
映画『JIN-仁-』や『キングダム』で見せる強さとは違う、「人間・大沢たかお」の声を聴ける貴重な機会でもあります。
④ 走らない人にこそ聴いてほしい
「マラソンとか興味ないし……」という方も多いかもしれません。私(ひより)も普段あまり走らないので、最初はそう思っていました。でも本書を聴き終えた今、断言できます:走らない人にこそ、この本は響きます。
本書で語られるのは、走ること自体ではなく、「自分と向き合うこと」「継続することの哲学」「人生の中で大切にすべきこと」。これらは、走らない人にも普遍的に通じるテーマばかりなのです。
⑤ Audibleで聴く意義が大きい
本書はもともと文章で発表されたエッセイですが、Audibleで聴くことで「ランナーの語り」としての側面が強調されるのが面白い。文字で読むより、走り出すモチベーションが湧いてきますし、村上さんの語り口に「ながら聴き」の心地よさがあります。聴き終えたあと、思わず散歩に出たくなる——そんな不思議な力を持つ朗読です。
項目別の評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 内容の深さ | ★★★★★ | 人生哲学が詰まったメモワール |
| 文体・語り口 | ★★★★★ | 村上節の真骨頂 |
| 普遍性 | ★★★★★ | 走らない人にも響く |
| 朗読 | ★★★★★ | 大沢たかおさんの自然な語り |
| 余韻 | ★★★★★ | 聴き終えた後、何かを始めたくなる |
🎯 こんな方におすすめ
- ✓ 村上春樹作品のファンの方
- ✓ ランニング・マラソンが好きな方/興味がある方
- ✓ 大沢たかおさんのファンの方
- ✓ エッセイ・メモワールが好きな方
- ✓ 何かを「続けること」に意味を見出したい方
- ✓ 「自分と向き合う時間」を持ちたい方
- ✓ 走りながら聴ける本を探している方
- ✓ 普段とは違うジャンルに挑戦したい方
まとめ|「走る小説家」の哲学を、最高の朗読で
『走ることについて語るときに僕の語ること』は、村上春樹という小説家の「素顔」と「人生哲学」が詰まった、唯一無二のメモワールでした。
走ること、書くこと、年を取ること、自分と向き合うこと、人生を続けていくこと——シンプルなテーマの中に、これほど深い洞察と優しさが込められた本に出会えるのは稀です。
大沢たかおさんの「演じない朗読」が、村上さんの淡々とした文体と完璧に呼応し、まるで「村上春樹本人があなたに語りかけているような体験」を生み出してくれます。これは活字だけでは絶対に得られない、Audible版ならではの魅力です。
聴き終えた後、きっとあなたも何かを「始めたい」「続けたい」気持ちになっているはず。村上さんが墓碑銘にしたいと願う「少なくとも最後まで歩かなかった」——この言葉が、自分自身の人生にも響き始める一冊です 🏃🌟
走ることが好きな方も、まったく走らない方も、ぜひこの機会に大沢たかおさんの声を通して、村上春樹さんの世界に触れてみてください。
🎧 Audibleで『走ることについて語るときに僕の語ること』を聴く
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投稿日:2026年5月
— ひより —


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