「全員、なんかおかしい。」
ページをめくる手が止まらない、そんな小説に久しぶりに出会いました。染井為人さんの『黒い糸』は、登場人物のほぼ全員に違和感があって、読んでいる間ずっと心がざわついたまま。Audibleで聴いていたら、家事をする手まで止まってしまうほど没入してしまいました。今回はそんな衝撃の一冊をご紹介します 🎧
📚 本の基本情報
- タイトル:黒い糸
- 著者:染井為人
- 出版社:KADOKAWA
- 発売:2023年8月(文庫版:2025年8月)
- ナレーター:大久保多聞
- ジャンル:ホラーサスペンス/ミステリー
- 個人評価:★★★★☆(4.0 / 5.0)
あらすじ(ネタバレなし)
舞台は千葉県松戸市。結婚相談所で婚活アドバイザーとして働くシングルマザーの平山亜紀は、息子・小太郎と2人で暮らしています。ある日、無茶な要求をしてくる女性客とのトラブルを発端に、自宅への無言電話や悪質な嫌がらせが始まります。
一方、息子・小太郎が通う旭ヶ丘小学校の6年2組では、クラスメイトの女児が下校途中に失踪。担任教師が休職したため、新たに代理担任となった長谷川祐介は、クラスの優等生・莉世から「犯人について目星がついている」と告げられます。ところがその莉世も、何者かに襲われ意識不明に——。
亜紀と祐介、それぞれを取り巻く事件。一見無関係に見えるふたつの出来事は、「黒い糸」のように静かに、しかし確実に絡み合っていきます。
誰を信じたらいい?登場人物、全員が怪しい。
著者・染井為人さんについて
『黒い糸』を書いた染井為人(そめい・ためひと)さんは、千葉県印西市出身の小説家です。私と同じ千葉県在住の作家さんと知って、勝手に親近感を覚えてしまいました(笑)
もともとは芸能プロダクションでマネージャーや、ミュージカル・舞台演劇のプロデューサーとして活動。2017年、デビュー作『悪い夏』で第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し、作家デビューしました。社会派サスペンスから人間ドラマまで、ジャンルを横断する筆力で人気を集めています。
染井為人さんの主な作品
- 🧵 『悪い夏』(2017年・デビュー作)— 横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞。累計25万部突破、映画化決定の代表作
- 🧵 『正体』(2020年)— WOWOWでドラマ化された、逃亡犯を巡る社会派サスペンス
- 🧵 『正義の申し子』(2018年)
- 🧵 『震える天秤』(2019年)
- 🧵 『海神(わだつみ)』(2021年)
- 🧵 『鎮魂』(2022年)
- 🧵 『黒い糸』(2023年)— 著者初のホラーサスペンス
染井さんの作品は、社会の闇や人間の弱さを描きながらも、エンタメとしての面白さも兼ね備えているのが特徴。本人いわく「あくまでも娯楽本」とのこと、その姿勢が一気読みさせてしまう吸引力につながっているのかもしれません。
『黒い糸』は染井さんにとって初のホラーサスペンス挑戦作。これまでの社会派路線とは違った、人間の悪意そのものに迫る一冊になっています。
ナレーター・大久保多聞さんの朗読が素晴らしい
Audible版を聴くなら、もうひとつの主役と言えるのがナレーターの大久保多聞さんです。
大久保多聞(おおくぼ・たもん)さんは、声優事務所として知られる81プロデュース所属の若手声優。大阪府出身で、アニメ・吹替・ナレーション・オーディオブックなど幅広く活動しており、近年はAudibleでもナレーター作品が増えています。
『黒い糸』の朗読での大久保さんの魅力は、何といっても淡々とした語り口の中に潜む不穏な空気感。物語の登場人物が多く、視点も切り替わる作品ですが、声色の使い分けがとても自然で、混乱せずに聴き進められます。
特に、亜紀の追い詰められていく心理描写と、長谷川先生の冷静さの対比が見事。耳から入ってくる「人の声」だからこそ伝わってくる怖さ——これはオーディオブックならではの体験でした。
Audibleで聴くときのポイント
- 🎧 速度は1.0〜1.2倍がおすすめ(ホラー要素を味わうには等倍も◎)
- 🎧 夜に聴くと怖さ倍増。ホラー耐性のある方はぜひ夜のお供に
- 🎧 登場人物が多めなので、最初の数章は集中して聴くのがコツ
- 🎧 家事のBGMより、通勤や散歩中の方が没入できます
聴いた感想(ネタバレなし)
🌸 ここから先は、ネタバレを避けた感想です。核心には触れていないので安心してお読みください
① 「全員怪しい」というスリル
この小説のいちばんの魅力は、登場人物のほとんどに違和感があることです。亜紀の周りの人、小太郎のクラスメイト、長谷川先生、その兄……読み進めるほど、誰が善で誰が悪なのか分からなくなります。
「いい人そう」だと思った人が一番怖いのか、それとも「あからさまに怪しい」人がそのまま犯人なのか。読者は常に疑心暗鬼にさせられます。
② じわじわと侵食してくる悪意
派手なグロ描写があるわけではないのに、なぜかとても怖い。「普通の日常に潜む悪意」を描くのが染井さんは本当に上手いです。隣人かもしれない、同僚かもしれない、ママ友かもしれない——そんな「すぐそこにいる怖さ」を感じました。
③ 終盤の伏線回収が見事
中盤までは「これ、ちゃんと終わるのかな?」と心配になるくらい、登場人物が増えて事件も拡散していきます。でも終盤で“黒い糸”の意味が分かる瞬間、すべてがつながっていく構成は圧巻でした。
④ ちょっと気になった点
正直に言うと、犯人の動機については「えっ、そこ?」と少し肩透かしを食らった部分もあります。また、登場人物が多く一気に展開するので、人物関係が頭に入りにくい場面も。ただ、それも含めて「人間の不可解さ」を味わう作品として楽しめました。
項目別の評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | ★★★★☆ | 伏線回収が見事 |
| キャラクター | ★★★★★ | 全員に深い闇がある |
| 没入感 | ★★★★★ | 一気聴き必至 |
| 朗読 | ★★★★☆ | 不穏な空気感が秀逸 |
| 後味 | ★★★☆☆ | ホラー好きにはたまらない |
🎯 こんな方におすすめ
- ✓ ホラーサスペンスが好きな方
- ✓ 「人間の悪意」をテーマにした作品が読みたい方
- ✓ 貴志祐介『黒い家』が好きだった方
- ✓ 登場人物の心理描写が緻密な小説を求めている方
- ✓ ハラハラドキドキ、一気に没入したい方
まとめ|「人間がいちばん怖い」を体感する一冊
『黒い糸』は、超常現象や霊が出てくるホラーではありません。出てくるのは、私たちのすぐそばにいるかもしれない「ふつうの顔をした人々」。だからこそ、ページを閉じた後もしばらく余韻が残ります。
染井為人さんの新しい挑戦である本作。社会派サスペンスとはまた違う「人間ホラー」の世界を、ぜひ大久保多聞さんの朗読で味わってみてください。きっと、隣に座っている人の顔をふと見たくなりますよ……🧵
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投稿日:2026年5月
— ひより —

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