「その愛は、あまりにも切ない」
正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく——。『流浪の月』に続く2度目の本屋大賞を受賞し、横浜流星×広瀬すず主演で映画化も決定した凪良ゆうさんの最高傑作。Audibleで柚木尚子さんと志村倫生さんが暁海(あきみ)と櫂(かい)それぞれの視点をパートごとに演じ分ける構成は、「一人二役が当たり前のAudibleでは意外と珍しいパターン」として多くのリスナーが絶賛しています 🎧🌟🌊
📚 本の基本情報
- タイトル:汝、星のごとく
- 著者:凪良ゆう
- 出版社:講談社
- 発売:2022年8月4日(単行本)/2025年7月15日(文庫)
- ナレーター:柚木尚子(女性パート・暁海視点)、志村倫生(男性パート・櫂視点)
- Audible配信:2023年2月17日
- 再生時間:12時間8分
- ジャンル:青春・恋愛小説
- 主な受賞:2023年本屋大賞受賞(2度目)・キノベス!2023第1位・王様のブランチBOOK大賞2022
- 映像化:横浜流星×広瀬すず主演で映画化(2026年公開予定)
- 個人評価:★★★★★(5.0 / 5.0)
あらすじ
舞台は、瀬戸内海に浮かぶ風光明媚な小さな島。
主人公のひとりは、井上暁海(いのうえ・あきみ)、17歳。島に生まれ育った女子高校生。父は失踪し、母・志穂は不安定な精神状態で暁海に依存している。そんな母の世話を一人で続ける、典型的な「ヤングケアラー」です。
そこに転校してきたのが青埜櫂(あおの・かい)、17歳。自由奔放な母・ほのかの恋愛に振り回され、島に連れてこられた少年。母の恋人の家で生活しながら、ここではない場所を夢みています。
ともに問題を抱えた母親のもとで育った二人は、すぐに惹かれ合います。海に沈む夕暮れの中、暗くなりはじめた西の空にきらめく星をひとつ見つけた。
「夕星(ゆうづつ)だよ。一番星——宵の明星とも言う。金星だ」
手をつないで、この星を見つめた。
「夕星」——まだ純愛の世界にいた二人の、永遠の合言葉になります。
しかし、幸福は長くは続きません。二人は将来を誓い合いながらも、暁海の母の自殺未遂によって引き裂かれます。島に残り母を支える暁海、夢を追って上京する櫂——それぞれが選んだ「正しさ」の中で、二人の距離はじわじわと開いていきます。
物語は暁海と櫂、二人の視点が交互に語られます。
「わたしは愛する男のために人生を誤りたい」——暁海
「まともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない」——櫂
正しさに縛られ、愛に呪われながら、それでも二人は生きていく——「ひとつではない愛の物語」が、ゆっくりと、しかし確実に、あなたの心の奥深くに染み込んでいきます。
本書の見どころ
① 「ヤングケアラー」というテーマの切実さ
本書が多くの読者の心を掴んだ理由の一つが、「ヤングケアラー」という現代社会の切実な問題を愛の物語の中心に据えた点です。問題のある親を支え続ける子供たちの孤独と重さを、凪良さんは感傷的に描くのではなく、当事者たちの内側から丁寧に描き出します。
暁海の「正しい娘でいることへの疲弊」、櫂の「自由を求める反動としての罪悪感」——読み終えた後、家族というものの意味を深く問いかけられます。
② 二人の愛が「すれ違う」美しさと切なさ
本書で最も印象的なのは、暁海と櫂が「正しさ」を選んだゆえに引き裂かれていくという皮肉な構図です。お互いを愛しているのに、それぞれが正しく生きようとするほど離れていく——この切なさは、読んでいるこちらの胸まで痛くなる。
夕星という金星のモチーフが、物語全体を通じた美しい象徴として機能しています。離れていても、空の同じ場所に輝く夕星——二人の魂のつながりを表す最高に詩的な仕掛けです。
③ 「プロローグ&エピローグ」の構造美
冒頭のプロローグを読んだとき、多くの人は「これは何の話だろう?」と首を傾げます。しかし読み終えてエピローグを読んだ瞬間、冒頭のプロローグがまったく違う意味を持って蘇ってくる——この構造的な美しさが、本書のとてつもない完成度を示しています。凪良さんの「見事なストーリー展開に気付かされる」と評されるゆえんです。
④ 「生きることの自由さと不自由さ」という普遍的テーマ
本書は恋愛小説でありながら、「どんな生き方が正しいのか」という哲学的な問いを常に内包しています。島に残ることも、上京することも、誰かのために生きることも、自分のために生きることも——どれが正しいとは言えない。その「答えのなさ」の中で、懸命に生きる人間の美しさを描いた作品です。
著者・凪良ゆうさんについて
『汝、星のごとく』を書いた凪良ゆう(なぎら・ゆう)さんは、現代日本の恋愛・青春文学を牽引する作家です。
凪良ゆうさんのプロフィール
- 現住所:京都市
- デビュー:2007年(BLジャンル)
- BL代表作:「美しい彼」シリーズ(ドラマ化・映画化)
- 受賞:本屋大賞2回受賞(2020年・2023年)
凪良さんはBL(ボーイズラブ)ジャンルで活躍した後、一般文芸の世界へと活躍の場を広げました。2017年の『神さまのビオトープ』で高い支持を得て、2019年の『流浪の月』と『わたしの美しい庭』で一般文芸作家としての地位を確立。
2020年に『流浪の月』で本屋大賞を受賞し、2022年映画化(松坂桃李・広瀬すず主演)。そして2023年、本書『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞受賞という快挙を達成しました。
凪良ゆうさんの主な作品
- 📖 「美しい彼」シリーズ— BL代表作・ドラマ化・映画化
- 📖 『神さまのビオトープ』(2017年)— 一般文芸でのブレイク作
- 📖 『流浪の月』(2019年)— 2020年本屋大賞受賞・映画化
- 📖 『滅びの前のシャングリラ』(2020年)— 本屋大賞2年連続ノミネート
- 📖 『汝、星のごとく』(2022年)— 2023年本屋大賞受賞
- 📖 『星を編む』(2023年)— 続編・2024年本屋大賞ノミネート
2人のナレーターが「声で二つの人生」を届ける
本作Audible版の最大の特徴は、女性パートを柚木尚子さん、男性パートを志村倫生さんが担当する二人体制です。
「主人公2人のセリフに男女のナレーターがそれぞれ割り当てられているので、ストーリーが頭にスッと入ってきます。一人二役・三役が当たり前のAudibleでは意外と珍しいパターン。あまりの聴きやすさ、そして内容の素晴らしさに、思わず2周してしまった作品」
柚木尚子さんについて
柚木尚子(ゆずき・しょうこ)さんは、山口県周南市出身の女性声優。関西学院大学文学部を卒業後、ラムズ付属養成所RPEと映像テクノアカデミアを経てデビュー。2026年4月よりケンユウオフィスに正式所属が決定した実力派声優です。
柚木尚子さんのプロフィール
- 生年月日:7月4日
- 出身地:山口県周南市
- 所属:ケンユウオフィス
- 血液型:O型
- 特技:歌、スーパーボールすくい、フランス語
- 趣味:ゲーム、人狼、歌うこと
- 特記:2.5次元アイドルユニット「GARNET STAR」元メンバー
アニメ・ゲームの声優の他、吹き替えや舞台にも出演する幅広い活動を展開。自身のYouTubeチャンネル「柚木尚子のしょこちぃch」でも趣味活動を発信しています。
柚木尚子さんの主な出演作
- 🎙 アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
- 🎙 アニメ『ポケットモンスター(2023)』
- 🎙 アニメ『薬屋のひとりごと(2)』
- 🎙 アニメ『九龍ジェネリックロマンス』
- 🎙 アニメ『シークレット キャッチ!ティニピン』— ウタピン役
- 🎙 映画吹き替え:『エルマーのぼうけん』など
- 🎙 Audible朗読:『汝、星のごとく』(暁海パート)
本作での柚木さんの朗読の魅力は、暁海の「正しくあろうとする健気さ」と「愛することへの切実な渇望」を声だけで繊細に表現する力です。島の静かな海辺と暁海の内なる嵐——その対比が、柚木さんの声によって鮮やかに立ち上がります。
志村倫生さんについて
志村倫生(しむら・みちお)さんは、1984年8月21日生まれ、大阪府出身の俳優・声優です。宝塚造形芸術大学の映像造形学科舞台芸術コースを卒業後、劇団「伝染柱」で団長を3年間務めるなど舞台俳優として経験を積んだ実力派。現在はプロダクション・エースに所属し声優としての活動にも力を入れています。
志村倫生さんのプロフィール
- 生年月日:1984年8月21日
- 出身地:大阪府
- 所属:プロダクション・エース
- 特技:殺陣、日本舞踊、ギター、バスケットボール
- 趣味:映画、舞台、音楽鑑賞、喫茶店巡り
- 方言:関西弁
舞台では河森正治総監督の多次元プロジェクト「ノブナガ・ザ・フール」でアケチミツヒデ役を有明コロシアム等で演じるなど、大舞台での経験も豊富。
志村倫生さんの主な出演作
- 🎙 舞台「ノブナガ・ザ・フール」— アケチミツヒデ役(河森正治総監督作品)
- 🎙 舞台多数:ゲキバカ、氷川きよし主演「銭形平次」(明治座)、五木ひろし主演「夫婦囃子」(明治座)など
- 🎙 Audible朗読:『汝、星のごとく』(櫂パート)、『16歳からのはじめてのゲーム理論』
舞台俳優としての長年の経験と、大阪府出身ならではの自然な温かみが、本作での志村さんの朗読に独特の深みを生んでいます。自由を求めながらも葛藤を抱える少年・青年期の櫂の内面を、声の変化で丁寧に表現してくれます。
「二人の朗読」が生む奇跡
柚木さんの声で語られる暁海の世界と、志村さんの声で語られる櫂の世界——この二つが交互に紡がれることで、文字では伝えきれない「二人の感情の温度差」が声を通じて鮮やかに伝わってきます。暁海が島に残る孤独と、櫂が東京で感じる罪悪感——同じ出来事を全く異なる声で語られる体験は、Audibleでしか味わえない感動です。
Audibleで聴くときのポイント
- 🎧 速度は1.0倍がベスト(二人の声の違いと間合いを最大限に楽しむため)
- 🎧 声が切り替わる瞬間に注目——暁海パートと櫂パートの「空気の変化」が絶妙
- 🎧 夜に静かな環境で聴くのが最高のシチュエーション
- 🎧 映画公開前に聴くと、横浜流星×広瀬すずのビジュアルをより深く楽しめます
- 🎧 続編『星を編む』もAudibleで配信中——ぜひ続けて聴いてみてください
聴いた感想
① プロローグ→エピローグの「反転」に震えた
聴き始めたとき、プロローグの意味がよく分かりませんでした。でも12時間かけて暁海と櫂の物語を聴き終え、エピローグで再び同じ一節を聴いた瞬間——冒頭のあの言葉がまったく違う意味に見えて、思わず声が出ました。これは活字で読んでも感動するはずですが、朗読で聴くと感情の積み重ねが直接声に乗ってくるので、その反転の衝撃がさらに大きい。
② 柚木尚子さんの暁海が「健気すぎる」
柚木さんが声を与えた暁海は、私(ひより)が読書史上最も応援したくなったキャラクターかもしれません。母を支えながら、でも自分も誰かに寄りかかりたくて——その葛藤が柚木さんの少し震えるような声の質感と完璧にマッチしていて、何度ももらい泣きしました。
③ 志村倫生さんの声で、櫂の「温度」が伝わる
志村さんが演じる櫂は、声の熱量が微妙に違うのが面白かったです。高校時代の熱く不器用な言葉と、上京後の少し冷静になった語り口——年月の経過と成長が、声の質感の変化で自然に伝わってきます。これは舞台俳優出身ならではの技術だと感じました。
④ 「ひとつではない愛の物語」の深さ
本書を聴き終えた後、「正しい愛とは何か」という問いがずっと頭に残りました。暁海の愛も、櫂の愛も、北原先生の愛も、それぞれが正しくて、それぞれが不完全で——「愛はひとつではない」という凪良さんのメッセージが、12時間かけてじっくりと心に刷り込まれていきます。
項目別の評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー構成 | ★★★★★ | プロ→エピの反転が完璧 |
| キャラクター | ★★★★★ | 暁海も櫂も誰もが愛おしい |
| テーマ性 | ★★★★★ | 愛と自由と正しさへの問い |
| 朗読(柚木尚子) | ★★★★★ | 暁海の健気さが声に滲む |
| 朗読(志村倫生) | ★★★★★ | 年月の変化を声で表現 |
🎯 こんな方におすすめ
- ✓ 本屋大賞受賞作を聴いてみたい方
- ✓ 凪良ゆうさんの作品を初めて読む方
- ✓ 切なく深い恋愛小説が好きな方
- ✓ ヤングケアラーや家族問題に関心がある方
- ✓ 瀬戸内・島の風景が好きな方
- ✓ 映画公開前に原作を楽しんでおきたい方(横浜流星×広瀬すず主演)
- ✓ 二人のナレーターが演じ分ける珍しいオーディオブック体験をしたい方
- ✓ 『流浪の月』が好きだった方
⚠ 注意したい方
- 胸が痛くなる展開が多いので、気持ちが落ちているときは注意
- ハッピーエンド一直線を期待する方には違う感触かも(でもその先に必ず何かがある)
まとめ|夕星のように、二人の愛は永遠に輝き続ける
『汝、星のごとく』は、愛することの自由と不自由を、瀬戸内の島を舞台に切なく美しく描いた2023年本屋大賞受賞の傑作でした。
暁海と櫂が「正しく生きようとするほど引き離されていく」という逆説的な悲しさ、そして「夕星」という詩的なモチーフが物語全体を貫く構造美——読み終えた後、西の空に光る金星を見上げずにいられなくなります。
柚木尚子さんと志村倫生さんによる二人体制の朗読は、暁海と櫂の感情の温度差を声で立体化し、「活字で読むのとは全く別の体験」を生み出しています。12時間8分——長いようで、聴き終えた後の余韻はもっと長く、心に残り続けます 🌊🌟
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投稿日:2026年5月
— ひより —


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