光のとこにいてね あらすじ

本屋大賞


「そこの、光のとこにいてね」——別れの言葉が、30年間ふたりをつなぎ続けた。

BL小説家として長年活躍してきた一穂ミチが、一般小説で初めて女性同士の愛を描いた渾身の長編。一穂ミチ『光のとこにいてね』は、2023年本屋大賞ノミネート・第168回直木賞候補・第30回島清恋愛文学賞受賞という評価を受けた「スモールワールズを超える最高傑作」です。

Audible版のナレーターは、ケンユウオフィス所属の声優・松本沙羅さん。「文章そのものが美しく、情景描写も美しい」と評されるこの作品を、聴きやすい語り口で届けてくれます。

📚 作品の基本情報

  • タイトル:光のとこにいてね
  • 著者:一穂ミチ
  • ナレーター:松本沙羅
  • 出版社:文藝春秋
  • ジャンル:恋愛小説・シスターフッド・女性文学
  • 受賞・候補歴:第168回直木賞候補/2023年本屋大賞ノミネート/第30回島清恋愛文学賞受賞(2024年)
  • Audible制作:Audible Studios

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光のとこにいてね

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📖 あらすじ

物語は3つの章で構成され、それぞれ「子ども時代」「高校時代」「大人時代」を描きます。同じ出来事を主人公ふたりの視点が交互に語る構造で、視点の切り替えはなんと全55回——まるでコインの表と裏を何度も見るように、同じ瞬間が違う色で浮かび上がります。

第一章——小学2年生

お嬢様育ちの結珠(ゆず)が、母親に連れられ古びた団地を訪れます。不思議な事情で待たされていた広場で出会ったのが、団地に住む果遠(かのん)。着るものも食べるものも住む世界も、何もかもが違うふたり。でも、なぜか結珠は果遠が笑うと笑顔になれて、果遠が泣くと悲しくなれた。

果遠がスコップを取りに戻る前、結珠に告げた一言——「そこの、光のとこにいてね」。しかしそこへ、普段と様子の違う結珠の母親が現れます。そのまま結珠は引き連れられ、ふたりはあっけなく引き離されてしまいます。

第二章——高校時代

8年後。進学した高校でふたりは再会します。記憶の中と変わらず美しくなった果遠。胸の高鳴りを抑えながら近づく結珠。しかしまたしても、大人の事情がふたりを引き裂きます——今度は果遠の側の事情で。別れ際に残された言葉も、また「光のとこにいてね」でした。

第三章——大人のふたり

さらに10数年の時が流れ、それぞれの人生を歩んできたふたりが意外な場所で再会します。もう大人のふたりは、親の都合に翻弄されることはない——はずでした。しかし今度は、それぞれの選んだ「人生」そのものが、ふたりの間に立ちはだかります。

「光のとこにいてね」という言葉は、章ごとに違う重みと意味を帯びて繰り返されます。別れの言葉であり、愛の言葉であり、そして最後には——。

✍️ 著者プロフィール:一穂ミチ

一穂ミチ(いちほ・みち)さんは1978年1月生まれ、大阪府出身の小説家です。本名・年齢(詳細)・顔出しともに非公開というスタイルを貫いており、会社員との兼業を長年続けています。「会社では小説家であることを知らない人がほとんどで、その環境が精神的に良い」と語っています。

ペンネームの由来は「一穂」が「一冊だけでも出してもらえれば」という願いから、「ミチ」は「本当に何の由来もなく適当に」決めたというエピソードが知られています。関西大学社会学部を卒業後、会社員として勤めながら同人誌で二次創作小説を書いていたところ編集者に声をかけられ、2007年「雪よ林檎の香のごとく」でBL雑誌デビュー。以降BLジャンルの人気作家として活躍しながら、2021年に一般小説デビューを果たしました。

  • 2007年「雪よ林檎の香のごとく」でデビュー(BL小説)
  • 2020年「イエスかノーか半分か」劇場版アニメ化
  • 2021年「スモールワールズ」で一般小説デビュー、第165回直木賞候補・第43回吉川英治文学新人賞・第9回静岡書店大賞受賞
  • 2022年 2022年度咲くやこの花賞(文芸その他部門)受賞
  • 2023年「光のとこにいてね」が第168回直木賞候補・2023年本屋大賞ノミネート
  • 2024年「光のとこにいてね」で第30回島清恋愛文学賞受賞
  • 2024年「ツミデミック」で第171回直木三十五賞受賞

一般小説デビューからわずか3年で直木賞を受賞するという快挙を成し遂げた一穂ミチさん。その筆力の根底にあるのは、BL作家として長年磨いてきた「心の機微を言葉にする力」と、大阪出身らしいユーモアと人情の眼差しです。本作は、これまでBLで描いてきた「特別なひとりに向けられる感情」を、女性同士の物語として初めて正面から描いた作品として、特別な位置づけにあります。

🎙️ ナレータープロフィール:松本沙羅

松本沙羅(まつもと・さら)さんは1992年5月25日生まれ、千葉県出身のO型の女性声優です。ケンユウオフィス所属。専門学校東京アナウンス学院を卒業後、Talk backで2年間研鑽を積み、ケンユウオフィス預かりを経て所属しました。趣味は神社仏閣調べ・体を動かすこと、特技はラジオ体操第一というユニークな個性の持ち主です。

主な出演作は以下のとおりです。

  • 『半妖の夜叉姫』(日暮とわ・主演)——2020〜2021年・読売テレビ・日本テレビ系
  • 『この音とまれ!』(来栖妃呂)
  • 『BORUTO-ボルト-』(雀乃なみだほか)
  • 『私の推しは悪役令嬢。』(ロレッタ=クグレット)
  • 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』
  • 『ヘブンバーンズレッド』(月城最中・ゲーム)
  • 吹き替え:『梨泰院クラス』(チョ・イソ)、『パラサイト 半地下の家族』(パク・ダヘ)、『トッケビ』(チ・ウンタク)など韓国ドラマ・映画を多数担当

Audible版『光のとこにいてね』では、繊細で美しい文章を「聴きやすく良かった」と評価されています。女性同士のふたりの視点が55回交互に切り替わるという独特の構成は朗読上の難度が高いものの、松本さんの落ち着いた語り口がこの複雑な構造を丁寧にほどきながら届けてくれます。なお、松本さんはこのブログで紹介した作品「汝、星のごとく」のナレーター・柚木尚子さんと同じケンユウオフィス所属の声優です。

🎧 Audibleで聴くポイント

◆ 55回の視点切り替えを「声」で追う

本作最大の特徴は、ふたりの主人公が同じ出来事を交互に語るという構成です。同じシーンを、結珠の目線で聴いた後に果遠の目線で聴くと、まるで別の物語のように感じられる瞬間があります。文字では記号や改行で視点の切り替えが明示されますが、Audibleで聴く場合はその境目に集中する必要があります——慣れてくると、この「音で追いかける視点切り替え」が物語の深みを増してくれます。

◆ 「光のとこにいてね」という言葉が章ごとに変わる体験

タイトルでもあるこの言葉は、物語の中で繰り返し登場します。子ども時代・高校時代・大人時代と、同じ言葉でありながらそのたびに意味と重さが変わる——声で聴いていると、松本沙羅さんのトーンの微妙な変化がその「言葉の変容」を届けてくれます。「この言葉が出るたびに来たぞという気持ちと言わないでという気持ちが渦を巻く」というリーダーの感想は、Audibleでも同様に体験できます。

◆ 「LGBTとも違う気がする」という感情を声で受け取る

本作はいわゆるBL・百合小説というより、ふたりの間に流れる「言葉にならない引力」の物語です。ジャンルで分類しきれないその感情の微妙さは、活字よりも声で聴く方が直感的に伝わる部分があります。「LGBTとも違う気がする、でもどうしようもなく惹かれ合う」というAudibleリスナーのレビューの言葉が、まさにその体験を言い当てています。

◆ 家事・通勤のながら聴きより、集中して聴くのを推奨

視点切り替えが多く心理描写が細やかなため、「数分間ストーリーが進んでいることに気づかず何度も巻き戻した」というリスナーの声があります。ながら聴きよりも、静かな場所で集中して聴くことで物語の繊細さを最大限に受け取れます。特に第三章の展開は、ぜひ落ち着いた環境でじっくりと向き合ってください。

💬 ひよりの感想

① 「光のとこにいてね」というタイトルが天才的

この言葉がタイトルだと知って読み始めたとき、なぜこれがタイトルなのか最初はわかりませんでした。でも物語が進むにつれて、この6文字がどれほど多くの意味を背負っているかがわかってきて——読み終えたとき、これ以外のタイトルはないと確信しました。Audibleで松本沙羅さんの声でこの言葉が繰り返されるたびに、確かに胸が痛くなります。

② 正反対のふたりが「惹かれ合う」描写の繊細さ

お嬢様育ちの結珠と団地育ちの果遠。何もかもが違うのに、ふたりのあいだに流れる「魂の片割れ」のような引力。その感情を一穂ミチさんは決して過剰に描かず、日常の細やかな描写の積み重ねの中に溶かしていく。その繊細さは、BL作家として長年磨いてきた「心の機微を書く力」があってこそだと感じました。

③ 「大人の事情」に翻弄される子どもたちの痛さ

第一章・第二章で、ふたりが引き裂かれる原因はどちらも「親の大人の事情」です。当の子どもたちの意志は全く介在しない。その理不尽さと、それでも「光のとこにいてね」という言葉を手がかりに相手を思い続けるふたりの姿が、切なくて切なくて——Audibleで聴いていて手を止めてしまう場面が何度もありました。

④ 第三章の展開が一番心に刺さった

大人になったふたりが再会する第三章。もう親の都合に振り回されなくていい——はずなのに、今度は自分たちが選んできた「人生」そのものが壁になる。そこで結珠が取った行動には、子どもの頃からは想像もできない成長と決意があって。「引き裂かれる運命に身を任せず逆らおうとする」姿に、涙をこらえるのが大変でした。

⑤ 松本沙羅さんの朗読が「美しい文章」をさらに引き立てる

「文章そのものが美しい」と評される一穂ミチさんの文体は、Audibleで声として聴くとその音楽性がより際立ちます。松本沙羅さんの落ち着いた語り口は、美しい文章の邪魔をしない——その抑制が、物語の詩的な空気をそのまま耳に届けてくれました。

⭐ 項目別評価

項目 評価 コメント
ストーリーの面白さ ★★★★★ 30年をかけた再会の物語に圧倒的な引力がある
キャラクターの魅力 ★★★★★ 結珠と果遠、正反対なのに魂の片割れのよう
Audibleとの相性 ★★★★☆ 視点切り替えが多いため集中して聴くのが◎
ナレーションの質 ★★★★☆ 美しい文章を邪魔しない落ち着いた語り口
ながら聴きのしやすさ ★★★☆☆ 繊細な構成ゆえ、集中環境での聴取を強く推奨
初心者へのおすすめ度 ★★★★☆ 一穂ミチ入門としても、Audible体験としても良作

🙋 こんな方におすすめ

  • ✅ 「一生に一度しか出会えない人」の物語に惹かれる方
  • ✅ 女性同士の深い絆・シスターフッドを描いた作品が好きな方
  • ✅ 美しい文体・詩的な表現を声で楽しみたい方
  • ✅ 一穂ミチさんの作品(スモールワールズ等)が好きだった方
  • ✅ 直木賞・本屋大賞の話題作をAudibleで体験したい方
  • ✅ 読後に長い余韻が残る物語を求めている方

📝 まとめ

『光のとこにいてね』は、30年という時間をかけて繰り返す「別れと再会」の物語であり、「光のとこにいてね」というたった9文字の言葉が章をまたぐたびに違う意味を帯びて、最後には胸の深いところへと刻まれる、稀有な一冊です。

松本沙羅さんの朗読は、その詩的な世界観を声で守りながら静かに届けてくれます。結珠と果遠の物語に、ぜひ耳を傾けてみてください。

※本記事にはAmazonアソシエイト等のアフィリエイトリンクが含まれています。

📚 一穂ミチの他のAudible作品

  • スモールワールズ——一般小説デビュー作。6つの短編で描く「世界の小さな奇跡」。第43回吉川英治文学新人賞受賞。
  • ツミデミック——第171回直木賞受賞作。

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投稿日:2026年5月 / 著者:ひより

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