ババヤガの夜

小説・フィクション

「暴力が、漫画や音楽やファッションより、ずっと楽しい娯楽だった」
喧嘩に天才的な才能を持ち、暴力を心から楽しむ女・新道依子が、暴力団の会長宅に拉致され、組長の一人娘・尚子を護衛することになった——。日本人初の英国推理作家協会ダガー賞受賞・累計34万部突破・11ヵ国で翻訳出版決定という世界的快挙を成し遂げた王谷晶さんの傑作を、Audibleで甲斐田裕子さんが朗読します。『銀魂』月詠・アン・ハサウェイの声でおなじみ「男勝りな女性」を演じさせたら業界随一のハスキーボイスが、依子というキャラクターに完璧にハマる——奇跡のようなキャスティングです 🎧🔥👊

📚 本の基本情報

  • タイトル:ババヤガの夜
  • 著者:王谷晶
  • 出版社:河出書房新社(単行本)/河出文庫
  • 単行本発売:2021年4月
  • ページ数:192ページ
  • ナレーター:甲斐田裕子
  • ジャンル:クライムノベル/ハードボイルド
  • 主な受賞・実績:第74回日本推理作家協会賞長編部門最終候補・英国推理作家協会ダガー賞翻訳部門受賞(日本人初)・累計34万部突破・11ヵ国で翻訳出版決定
  • 個人評価:★★★★(4.0/ 5.0)

タイトル「ババヤガ」とは

ババヤガ(Baba Yaga)はスラヴ神話に登場する超自然的な老婆(魔女)です。森の奥の、鶏の脚の上に立つ小屋に住み、来訪者を助けることもあれば喰い殺すこともある——善悪を超えた存在です。

本書の主人公・新道依子は、まさにこのババヤガのような存在。助けるのか壊すのかわからない。善でも悪でもない。ただそこに圧倒的な暴力がある——そんな依子の本質を、タイトルが一言で表現しています。

あらすじ

主人公は新道依子(しんどう・よりこ)。彼女には一つだけ、飛び抜けた才能がありました——喧嘩です。暴力が、漫画や音楽やファッションよりずっと楽しい。体を力の中に浸すことに、心から興奮を覚える。そんな、普通ではない女性です。

ある日、バイトの後に新宿で映画でも見ようと出かけた依子は、ガラの悪い男たちと大立ち回りを演じます。しかし後頭部をビール瓶で殴られ、気絶。目が覚めると——世田谷にある暴力団・内樹會(うちき・かい)の屋敷に連れ込まれていました

拉致されたにもかかわらず、組員の男の腕につかまるふりをして立ち上がった直後、依子はその男を宙に抱え上げ、背中から石畳に叩きつけます。冒頭からこの調子です。

内樹會の会長は依子の圧倒的な腕力と闘争本能を見抜き、ある「仕事」を持ちかけます——会長の一人娘・尚子(しょうこ)の護衛です。

病弱で外出もままならない尚子と、暴力だけが生きがいの依子。正反対の二人の関係が、物語の軸になります。

依子は尚子の護衛を引き受けますが、組の内部抗争、裏社会の陰謀、そして男性社会の壁が次々と立ちはだかります。組員からの性暴力の脅威、「女」であることで信用されない現実——しかし依子は「誰かの何かとして生きるのは無理だ」と言い放ち、自分の信念を貫きます。

やがて依子と尚子の間には、友情とも恋愛とも名付けようのない関係が生まれていきます。曖昧でありながら確かな、二人だけの絆——それがこの物語のもう一つの核心です。

本書の見どころ

① 192ページの「火炎瓶」——圧倒的な疾走感

本書はわずか192ページ。この短さが信じられないほどの密度と疾走感が詰まっています。王谷さん自身が「文章で世の中に火炎瓶を投げたい」と語る通り、冒頭から最後まで一気に読ませる爆発的なエネルギーが文章に宿っています。

Audibleで聴くと、この疾走感がさらに加速します。甲斐田裕子さんのテンポの良いハスキーボイスが、192ページ分の爆発を耳元で炸裂させてくれるのです。

② 「暴力を楽しむ女」という衝撃的な主人公

新道依子というキャラクターは、ミステリー小説史上でも極めて異色の主人公です。暴力を「嫌々ながら」や「やむを得ず」使うのではなく、心から楽しんでいる——この設定が読者の価値観を最初から揺さぶります。

しかし読み進めると、依子の暴力には「自分自身で居続けるため」という切実さがあることに気づかされます。男性社会の中で「女」であることの抑圧に対し、暴力という手段でしか自分を守れなかった彼女の生き様に、次第に深い共感が生まれてくるのです。

③ 「名付けようのない関係」を描く勇気

依子と尚子の関係は、友情なのか、恋愛なのか、家族なのか——明確には名付けられないところが本書の最大の魅力です。王谷さん自身がダガー賞の受賞スピーチで「曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています」と語ったように、「ラベルをつけない」ことの豊かさが本書には溢れています。

④ 日本人初のダガー賞——世界が認めた「火炎瓶」

本書の英訳版”The Night of Baba Yaga”(翻訳:サム・ベット)は、2025年に英国推理作家協会ダガー賞翻訳部門を受賞しました。日本人として初、アジア作家として史上2人目の快挙です。累計34万部を突破し、11ヵ国での翻訳出版が決定するなど、世界的なベストセラーとなっています。

著者・王谷晶さんについて

『ババヤガの夜』を書いた王谷晶(おうたに・あきら)さんは、世界的に注目される日本人作家です。

王谷晶さんのプロフィール

  • 生年:1981年
  • 出身地:東京都(北関東で育つ)
  • 学歴:東京のデザイン系専門学校卒業
  • 職歴:就職氷河期世代。様々な非正規の仕事→ゲームのシナリオライター→作家
  • デビュー:2012年、ノベライズ作品でデビュー
  • 受賞:英国推理作家協会ダガー賞翻訳部門(2025年・日本人初)・Public of The Year 2025学術・文化部門
  • セクシュアリティ:レズビアンであることを公表

幼少期は両親が営む書店に囲まれて育ち、自然と本に親しむ日々を送った王谷さん。就職氷河期世代として様々な非正規の仕事を経験した後、ゲームのシナリオライターを経て作家に転身しました。

自身がレズビアンであることを公表しているLGBTQ+当事者でもあり、作品にはジェンダーやセクシュアリティへの鋭い洞察が常に息づいています。受賞スピーチで述べた「曖昧さを受け入れる」という信念は、作品世界のみならず王谷さん自身の生き方にも通底する姿勢です。

王谷晶さんの主な作品

  • 📖 『完璧じゃない、あたしたち』— 短編集
  • 📖 『ババヤガの夜』(2021年)— ダガー賞翻訳部門受賞・34万部突破
  • 📖 『君の六月は凍る』
  • 📖 『他人屋のゆうれい』
  • 📖 『父の回数』
  • 📖 エッセイ『カラダは私の何なんだ?』
  • 📖 エッセイ『40歳だけど大人になりたい』

ナレーター・甲斐田裕子さんについて

本作のAudibleナレーターは、甲斐田裕子(かいだ・ゆうこ)さんです。

甲斐田裕子さんのプロフィール

  • 生年月日:1980年1月14日
  • 出身地:神奈川県川崎市
  • 所属:賢プロダクション
  • 血液型:O型
  • 身長:167cm
  • 特技:日本舞踊(若柳庸斐女の名を持つ)
  • 趣味:ヨガ
  • 愛称:甲斐田ちん

甲斐田裕子さんは声優業界で「男勝りな女性」「クールで強い女性」を演じさせたら右に出る者がいないと言われるハスキーボイスの持ち主です。少女時代に憧れていた職業は漫画家だったという意外な一面を持ち、神奈川県立神奈川総合高等学校を卒業後、演劇活動を経て声の仕事へ進出しました。

映画の吹き替えではアン・ハサウェイのフィックス(専属)声優として知られ、アニメでは『銀魂』の月詠、『機動戦士ガンダムUC』のマリーダ・クルス、『とある魔術の禁書目録』の黄泉川愛穂など、芯の強い成人女性キャラクターを多数担当しています。

甲斐田裕子さんの主な代表作

  • 🎙 アニメ『銀魂』— 月詠役(代表作の一つ)
  • 🎙 アニメ『機動戦士ガンダムUC』— マリーダ・クルス役
  • 🎙 アニメ『一騎当千』シリーズ— 呂蒙子明役
  • 🎙 アニメ『とある魔術の禁書目録』シリーズ— 黄泉川愛穂役
  • 🎙 アニメ『ユーリ!!! on ICE』— ミナコ先生役
  • 🎙 ゲーム『バイオハザード』シリーズ— クレア・レッドフィールド役(全作品担当)
  • 🎙 映画吹き替え・アン・ハサウェイ— フィックス声優(多数の作品)
  • 🎙 アニメ『ヒストリエ』(2027年放送予定)— 出演決定
  • 🎙 Audible朗読:『ババヤガの夜』

甲斐田裕子さんが依子を演じる「必然」

本作のナレーターに甲斐田裕子さんがキャスティングされた瞬間、多くのファンが「完璧だ」と思ったはずです。「暴力を楽しむ男勝りな女性」という新道依子のキャラクターと、甲斐田さんの「強くてクールな女性を演じさせたら業界随一」というハスキーボイスの相性は、奇跡的と言ってもいい。

『銀魂』の月詠で見せた「強さの中のやさしさ」、『バイオハザード』のクレアで見せた「過酷な状況での胆力」——これらの演技実績が、新道依子というキャラクターの多面性を声で完璧に再現してくれます。

特に本作で注目すべきは、依子が暴力を振るう場面の「楽しそうな声」と、尚子と過ごす場面の「名付けようのない柔らかさ」の対比です。この両極端を一人の声で表現できるのは、甲斐田裕子さんだからこそです。

Audibleで聴くときのポイント

  • 🎧 速度は1.0〜1.3倍がおすすめ——疾走感を活かしつつ甲斐田さんのハスキーボイスを味わう
  • 🎧 192ページの短さ=Audibleでも短時間。一気聴きがベスト
  • 🎧 アクションシーンの迫力は声で聴くとさらに凄い
  • 🎧 甲斐田裕子さんのファン(銀魂・バイオハザード等)は必聴——新たな一面に出会えます
  • 🎧 ダガー賞受賞後に聴くと、世界が評価した理由が実感できる

聴いた感想

① 冒頭3分で「持っていかれた」

聴き始めて最初の場面——拉致された依子が組員を宙に抱え上げて石畳に叩きつけるところで、完全に引き込まれました。甲斐田さんのハスキーボイスで語られるこの場面の迫力は、活字の何倍もの衝撃。「この声で聴く依子は最高だ」と確信した瞬間でした。

② 「暴力を楽しむ女」への感情の変化

最初は「暴力を楽しむ」という依子に戸惑いがありました。でも聴き進めるうちに、依子の暴力は「誰かの何かとして生きることを拒否する」ための手段だと気づく。男性社会の中で「女」であることの壁、組員からの性暴力の脅威——そういった抑圧に対する、彼女なりの抵抗の形が暴力なのです。その切実さに触れたとき、依子が一気に愛おしくなりました。

③ 依子と尚子の「名付けようのない関係」の美しさ

本書で最も心に残ったのは、依子と尚子の関係です。恋愛?友情?姉妹?——どのラベルも違うし、どのラベルも正しい。この「曖昧さ」が、逆にどんな名前をつけた関係よりも深く響く。甲斐田さんの声で聴くと、依子が尚子に向ける不器用な優しさの温度がダイレクトに伝わってきて、何度か胸が熱くなりました。

④ 192ページの密度——「火炎瓶」の体験

192ページという短さは、Audibleでも比較的短時間で聴き終えられます。でもその密度は圧倒的。無駄な一文がないのです。すべてのセリフ、すべての描写が、物語を前に進めるためだけに存在している——この潔さが「文章で世の中に火炎瓶を投げたい」という王谷さんの信念の体現です。

⑤ ダガー賞受賞の意味を実感した

聴き終えた後、改めてダガー賞の受賞スピーチを読みました。「曖昧であることは私の作家としてのテーマそのもの」——本書を聴いた後にこの言葉を読むと、王谷さんが何を信じて何を書いているかが、深く腑に落ちます。世界が認めた「火炎瓶」を、ぜひ耳で体験してほしい

項目別の評価

項目 評価 コメント
ストーリー ★★★★ 192ページの圧倒的な疾走感
主人公の魅力 ★★★★ 依子は唯一無二のヒロイン
テーマ性 ★★★ 曖昧さ・ジェンダー・暴力と自由
朗読(甲斐田裕子) ★★★★★ ハスキーボイスが依子に完璧にハマる
国際的評価 ★★★★★ ダガー賞受賞・11ヵ国翻訳・34万部

🎯 こんな方におすすめ

  • ✓ ハードボイルド・クライムノベルが好きな方
  • ✓ 強い女性キャラクターが登場する物語が好きな方
  • ✓ ダガー賞受賞作を体験したい方
  • ✓ 甲斐田裕子さんのファンの方(新たな一面に出会える)
  • ✓ ジェンダーやセクシュアリティに関心がある方
  • ✓ 短時間で一気聴きできる密度の高い作品を探している方
  • ✓ 「名付けようのない関係」を描く物語に惹かれる方
  • ✓ 海外文学ファンにも——世界が評価した日本小説として

⚠ 注意したい方

  • 暴力シーン・性暴力の描写が含まれます(ただし過度にグロテスクではありません)
  • ヤクザ社会が舞台のため、反社会的な描写に抵抗がある方は注意

まとめ|「火炎瓶」が世界に着弾した夜

『ババヤガの夜』は、暴力を愛する女・新道依子と組長の一人娘・尚子の「名付けようのない関係」を、192ページの密度で描ききった、日本人初のダガー賞受賞作でした。

「文章で世の中に火炎瓶を投げたい」——王谷晶さんのこの言葉は、本書を聴けばすぐにわかります。暴力と優しさ、強さと脆さ、男性社会への怒りと「曖昧さ」への信念——すべてが192ページに凝縮された、爆発的なエンターテインメントです。

甲斐田裕子さんのハスキーボイスは、新道依子というキャラクターのために存在するかのような完璧なキャスティング。強くてクールで、でも尚子の前でだけ見せる不器用な優しさ——その振れ幅を声ひとつで体現する甲斐田さんの演技は、本作のAudible版を特別な体験へと昇華させています 🔥👊✨

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投稿日:2026年5月
— ひより —

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