52ヘルツのクジラたち

本屋大賞

「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」
この一行が、聴いた後もずっと胸に残り続けています。町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』は、誰にも届かない孤独な声を抱えながら生きる人たちの、痛みと再生の物語。安田愛実さんの繊細な朗読を通して、貴瑚と少年の声が、まるで自分にだけ聴こえる52ヘルツの声のように深く心に響きます 🎧🐋

📚 本の基本情報

  • タイトル:52ヘルツのクジラたち
  • 著者:町田そのこ
  • 出版社:中央公論新社
  • 発売:2020年4月21日(単行本)/2023年5月25日(文庫)
  • ナレーター:安田愛実
  • ジャンル:ヒューマンドラマ/再生の物語
  • 主な受賞歴:2021年本屋大賞 大賞・読書メーター オブ・ザ・イヤー2020 第1位・王様のブランチ BOOK大賞2020 第1位
  • 累計発行部数:100万部突破
  • 映像化:2024年3月、杉咲花主演で映画化
  • 個人評価:★★★★★(5.0 / 5.0)

「52ヘルツのクジラ」とは?

本題に入る前に、タイトルの意味を。「52ヘルツのクジラ」とは、実在する世界に1頭だけのクジラのことです。

通常のシロナガスクジラが10〜39ヘルツ、ナガスクジラが20ヘルツで鳴くのに対し、このクジラは52ヘルツという他のクジラには聴き取れない高い周波数で歌います。何頭もの仲間がいるはずなのに、その声は誰にも届かない——だから「世界で最も孤独なクジラ」と呼ばれているのです。

このクジラに着想を得て描かれたのが、本作の物語です。

あらすじ

主人公は三島貴瑚(みしま・きこ)。家族から人生を搾取され続けてきた女性です。重い過去を背負い、東京から大分県の海辺の町に移り住んだ彼女は、ある雨の日、奇妙な少年と出会います。

13歳ほどの少年は、母親から虐待され「ムシ」と呼ばれ、声を発することができませんでした。かつての自分と少年の姿を重ねた貴瑚は、「あの時、聞き逃した声に対する贖罪」として、少年を助けようと決意します。

少年がよく聴いていた52ヘルツのクジラの声を、貴瑚も気に入り、彼を「52」と呼び始めます。少しずつ心を開いていく少年と、自分の傷と向き合う貴瑚。やがてふたりは、世間と、過去と、家族と——「届かない声」を抱える者同士として、ぶつかり合いながら互いを救っていきます。

誰にも届かないと思っていた声が、たった一人にでも届いたなら——
この物語は、そんな小さな奇跡を信じさせてくれる。

貴瑚の過去には、彼女を救ってくれた恩人「アンさん(岡田安吾)」の存在があります。彼との日々が回想として描かれながら、現在の貴瑚と少年の物語が進んでいく構成。過去と現在が、孤独な歌声のように響き合う美しい構造の小説です。

著者・町田そのこさんについて

『52ヘルツのクジラたち』を書いた町田そのこ(まちだ・そのこ)さんは、人間の心の繊細な機微を描かせたら右に出る者がいない、現代の人気作家です。

福岡県在住の作家で、2016年、『カメルーンの青い魚』で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞してデビュー。翌年、この作品を含む短編集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を刊行し、注目を集めました。

そして2020年に刊行した初の長編作品『52ヘルツのクジラたち』が、2021年本屋大賞を受賞。一躍、ベストセラー作家の仲間入りを果たしました。

町田そのこさんの主な作品

  • 🐋 『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(2017年)— R-18文学賞大賞受賞作を含む短編集
  • 🐋 『コンビニ兄弟 ―テンダネス門司港こがね村店―』シリーズ
  • 🐋 『うつくしが丘の不幸な家』
  • 🐋 『星を掬う』— 母娘の関係を描いた感動作
  • 🐋 『52ヘルツのクジラたち』(2020年)— 本屋大賞2021受賞・初の長編
  • 🐋 『宙ごはん』— 食を通じた家族の物語
  • 🐋 『あなたはここにいなくとも』

町田作品の特徴は、繊細な心理描写と巧みな伏線回収。「孤独」「家族の絆」「死」といった重いテーマを扱いながらも、どこか温かみのある物語に仕上げる手腕が見事です。

本作も、児童虐待・DV・介護・トランスジェンダー・毒親など、現代社会のさまざまな「届かない声」を真正面から描きながら、最終的には希望と再生を感じさせてくれる傑作になっています。

ナレーター・安田愛実さんの朗読が物語に命を吹き込む

Audible版『52ヘルツのクジラたち』の素晴らしさを支えているのが、ナレーターの安田愛実(やすだ・あいみ)さんです。

安田愛実さんのプロフィール

  • 生年月日:8月21日
  • 出身地:神奈川県
  • 身長:155cm
  • 血液型:A型
  • 趣味:料理、ハンドメイド
  • 所属:フリーランス(2019年6月独立)

安田さんは、高校時代に放送部で全国大会優秀賞を獲得したことをきっかけに声の世界へ。声優の専門学校を経て事務所所属を経験した後、2019年にフリーランスとして独立されています。ゲーム・吹替・Web CM・オーディオブックなど幅広く活躍されている実力派です。

そして特筆すべきは、Audible版『52ヘルツのクジラたち』が2025年12月の月間ランキングで第1位を獲得したこと!その後も1月は2位、2月は4位とランキング上位をキープし続けている、まさに今もっとも聴かれている朗読作品のひとつです。

安田さんの朗読の魅力は、何といっても登場人物の心の機微を繊細に表現する力。傷つきながらも芯を持つ貴瑚の声、声を発せない少年の沈黙の重さ、優しさに満ちたアンさんの言葉——どの瞬間も、聴いていて胸が締めつけられるほどの臨場感です。

特に、本作の象徴とも言える「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」という台詞。安田さんの声で聴いたとき、私は涙が止まりませんでした。文字で読むのとはまた違う、声だからこそ届く深さがそこにあります。

Audibleで聴くときのポイント

  • 🎧 速度は1.0倍がおすすめ(感情の機微を味わうため等倍がベスト)
  • 🎧 泣ける場面が多いので、人前ではご注意を
  • 🎧 重い内容を含むので、心に余裕がある時間に聴くのがおすすめ
  • 🎧 一気聴きより、章ごとにじっくり味わうのが向いている作品
  • 🎧 過去と現在が交錯するので、最初の数章は集中して聴くと◎

聴いた感想

① 「届かない声」を抱えるすべての人へ

本作の最も大きなメッセージは、「あなたの声は、誰かに届く可能性がある」ということです。

52ヘルツのクジラのように、誰にも届かないと諦めかけていた声。でも、もしかしたら世界のどこかに、その周波数を聴き取れる誰かがいるかもしれない——。これは絶望の物語ではなく、希望の物語でした。

② 重いテーマを真正面から描く誠実さ

児童虐待、DV、ヤングケアラー、トランスジェンダー、毒親……本作には現代社会の「声なき声」が幾重にも織り込まれています。

でも町田さんは、それを「可哀想なもの」として消費する書き方を一切しません。登場人物それぞれに尊厳と痛みがあり、それを丁寧にすくい上げる筆致が本当に誠実です。だからこそ、読み終えた後に「自分も誰かの声を聴ける人になりたい」と思える。

③ 貴瑚とアンさんの関係に号泣

貴瑚を救ってくれた恩人・アンさん。彼との回想シーンが、本作で最も心を揺さぶる部分のひとつです。

「魂の番(つがい)」という表現で語られる二人の関係は、恋愛とも友情とも違う、もっと深く神聖な絆。アンさんが抱えていた秘密と、その結末は……ぜひ自分の耳で聴いて、その重さを感じてほしいです。

④ 「52」と呼ばれる少年の成長

声を発せなかった少年が、少しずつ心を開いていく過程は、本作のもう一つの大きな感動ポイント。「ムシ」と呼ばれていた少年が、自分の名前を取り戻していく姿に、何度も涙腺が緩みました。

クライマックス、少年が初めて発した「ある言葉」を聴いた瞬間——安田さんの朗読も相まって、もう号泣不可避でした。

⑤ 安田愛実さんの朗読あってこその傑作

正直に言うと、原作の重いテーマを文字だけで追うのは、人によっては辛い読書体験になるかもしれません。でも安田さんの声に導かれて聴くと、痛みも美しさも、ちゃんと受け止められるのです。

Audible月間ランキング1位も納得。これはまさに「聴くべき小説」です。

項目別の評価

項目 評価 コメント
ストーリー ★★★★★ 痛みと希望が同居する傑作
キャラクター ★★★★★ 全員に血が通っている
テーマの深さ ★★★★★ 現代社会の「声」を見つめる
朗読 ★★★★★ 安田さんの繊細さに脱帽
感動 ★★★★★ 涙腺崩壊、何度も

🎯 こんな方におすすめ

  • ✓ 心を揺さぶる人間ドラマが好きな方
  • ✓ 「孤独」や「再生」をテーマにした物語に惹かれる方
  • ✓ 社会的なテーマを扱った小説を読みたい方
  • ✓ 涙活したい方(号泣注意)
  • ✓ 町田そのこさんの作品をまだ読んだことがない方
  • ✓ 杉咲花主演の映画版を見た方/これから見る予定の方
  • ✓ 本屋大賞作品を制覇したい方

⚠ 注意したい方

  • 児童虐待・DV・自死などの描写が含まれます
  • 心に余裕がある時間に向き合うことをおすすめします
  • 軽い気持ちで聴ける本ではありません

まとめ|「あなたの声を聴く人」になりたくなる一冊

『52ヘルツのクジラたち』は、「届かない声」と「聴き逃した声」をめぐる、深く美しい物語でした。

誰かの声を聴くことは、その人の存在を認めること。たった一人にでも「あなたの声を聴くよ」と言ってくれる人がいれば、人は救われる——本作はそんな当たり前で、でも忘れがちな真実を、痛みとともに教えてくれます。

町田そのこさんの筆と、安田愛実さんの声。この二つの才能が出会ったAudible版は、文字で読むのとはまた違う、「耳で受け取る」という体験ならではの感動が待っています。

聴き終えた後、きっとあなたも世界の「52ヘルツの声」に耳を澄ませたくなるはず。誰かの孤独に気づける人になりたい——そう願わずにはいられない、心に長く残る一冊です 🐋🌊

Audible会員なら聴き放題対象作品。初めての方は30日間無料体験で試せます。52ヘルツのクジラたちを、ぜひこの機会に。

Audibleで聴いてみる

投稿日:2026年5月
— ひより —

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