平成3年、同時に起きたふたつの誘拐事件。被害男児の一人は3年後に帰ってきた——でも、どこへ「いた」のかは、30年後も誰も知らなかった。
グリコ森永事件をモデルにした『罪の声』で社会派ミステリーの頂点に立ち、映画化も果たした塩田武士が、満を持して送り出した渾身の長編。塩田武士『存在のすべてを』は、2024年本屋大賞第3位に輝き、「ミステリと人間ドラマが奇跡のように融合している」と絶賛された傑作です。
Audible版のナレーターを務めるのは蒼木智大さん。その繊細な表現力で多くのリスナーの心を掴み、19時間近い長大な作品を最後まで集中して聴かせる技術は一流と評価されています。
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存在のすべてを
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📚 作品の基本情報
- タイトル:存在のすべてを
- 著者:塩田武士
- ナレーター:蒼木智大
- 出版社:朝日新聞出版
- ジャンル:社会派ミステリー・人間ドラマ
- 本屋大賞:2024年本屋大賞第3位
- Audible再生時間:約19時間
- Audible制作:Audible Studios
📖 あらすじ
1991年(平成3年)、ある都市で同時にふたつの児童誘拐事件が発生します。4歳の男児・内藤亮(ないとう・りょう)と、もう一人の子供が標的となった前代未聞の事件でした。警察は最初の事件を「おとり」として第2の事件解決を図りますが、判断ミスによって犯人を取り逃してしまいます。行方不明になった亮は、3年後、両親ではなく祖父母のもとに突如として帰ってきました。
しかし「3年間どこにいたのか」は、亮の口からは一切語られませんでした——。
それから30年。当時の警察担当記者だった門田次郎(もんでん・じろう)は、旧知の刑事の死をきっかけに「今の亮」の情報を掴みます。老記者の取材本能に火がついた門田は、事件を再取材するうちに、北海道を拠点に活動するある写実画家の存在に行き着きます——その画家の名は野本貴彦(のもと・たかひこ)。そして彼の描く絵の中に、亮が幼少時代を過ごした場所との奇妙な一致が浮かび上がってきました。
30年前の空白の3年間に何があったのか。誘拐犯は誰で、なぜそのような行動を取ったのか。そして亮が写実画家として生きることを選んだ背景には、何が——。
物語は前半の骨太な社会派ミステリーから、後半で一転して胸を締め付けるような人間ドラマへと変貌を遂げます。「質感なき時代に『実』を見つめる」という帯文が示すとおり、写実画という芸術が持つ意味が、物語の深い部分で静かに光を放ちます。
✍️ 著者プロフィール:塩田武士
塩田武士(しおた・たけし)さんは1979年4月21日生まれ、兵庫県尼崎市出身の小説家です。報徳学園高等学校、関西学院大学社会学部卒業後、神戸新聞社に入社。将棋担当記者として約10年勤務した後、2012年に退社して専業作家となりました。
幼い頃から「人をあっと言わせたい」という思いがあり、物語を書くことへの情熱を持ち続けていました。新聞記者としての徹底した取材力と、社会問題への鋭い眼差しは、作家としての最大の武器となっています。
- 2010年「盤上のアルファ」で第5回小説現代長編新人賞受賞・デビュー(全選考委員満場一致・15分で決定)
- 同作で第23回将棋ペンクラブ大賞文芸部門大賞受賞
- 2016年「罪の声」で第7回山田風太郎賞受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10国内部門1位
- 2017年「罪の声」で本屋大賞3位
- 2018年「騙し絵の牙」で本屋大賞6位(俳優・大泉洋への当て書きが話題)
- 2019年「歪んだ波紋」で吉川英治文学新人賞受賞
- 2024年「存在のすべてを」で本屋大賞3位
- 2025年「踊りつかれて」で第173回直木賞候補
代表作『罪の声』(小栗旬・星野源主演)、『騙し絵の牙』(大泉洋主演)がいずれも映画化を果たし、現在の日本エンターテインメント小説界を代表する作家として揺るぎない地位を築いています。本作は、同じく子供が事件に巻き込まれる『罪の声』の「アンサーノベル」とも評される作品です——『罪の声』が取り返しのつかない悲劇を描いたとすれば、『存在のすべてを』では塩田武士が初めて「子供を救いたかった」という思いを正面から描き切っています。
🎙️ ナレータープロフィール:蒼木智大
蒼木智大(あおき・ともひろ)さんは、Audible版『存在のすべてを』のナレーターを務める声優・ナレーターです。
蒼木さんの声には優しさと力強さが共存しており、長時間の朗読でも聴き手を飽きさせない魅力があります。本作での朗読は、誘拐事件の被害者とその周囲の人々を描いた複雑な物語において、各キャラクターの心情を丁寧に表現し、「感動しました」と言わしめるほどの力を持っています。19時間近い長編作品でありながら、最後まで集中して聴かせる技術は、まさに一流の証として評価されています。
現時点では公式の詳細なプロフィールの確認が難しい状況ですが、本作のAudible版ではその表現力と安定感で高い評価を獲得。新聞記者・門田の粘り強い取材姿勢、写実画家・野本の複雑な内面、そして事件に関わるさまざまな人物たちを丁寧に演じ分け、塩田武士が重ね合わせた「人間の存在」というテーマを声で体現しています。
🎧 Audibleで聴くポイント
◆ 約19時間——「大河ミステリー」として腰を据えて聴く
本作のAudible版は約19時間という長大なボリュームです。物語は前半の重厚な社会派ミステリーと、後半の感動的な人間ドラマという2つの大きなパートで構成されているので、「前半を数日かけて聴き、後半に一気に集中する」という聴き方がおすすめです。週末にじっくり向き合う一作です。
◆ 「写実画」という芸術を声で受け取る
本作の核心にあるのは「写実画」——デジタル化が進み、あらゆるものが便利で希薄になっていく時代に、目の前の「存在」を丁寧に見つめ、そのリアルを描き続ける芸術です。文字で読んでいると見落としがちなこのテーマの深さが、蒼木智大さんの語りによってじわじわと耳に積もっていきます。
◆ 前半と後半で「物語の顔」が変わる体験
前半は骨太な社会派ミステリーとして「誰が?なぜ?」という謎に引き込まれ、後半からは視点が変わって「空白の3年間」の真実が情感豊かに明かされます。この転換点は文章で読む以上に、声で聴くことで感情的なインパクトが強くなります。
◆ 塩田武士×記者×事件という最強の組み合わせ
著者自身が新聞記者出身であることで、主人公・門田次郎の取材描写は桁外れにリアルです。記者がどう動き、どう考え、どう情報を繋げていくかのプロセスが、Audibleで聴くと臨場感たっぷりに届きます。
💬 ひよりの感想
① 「誘拐事件ミステリー」の常識をひとひねりした着想が冴える
同時に起きたふたつの誘拐事件、警察がおとり捜査を試みて失敗、そして3年後に帰ってきたのに「どこにいたか」を語らない——この設定を思いついた時点で勝ちだと思います。普通の誘拐ミステリーなら「犯人は誰か」が謎ですが、本作の謎はもっと複雑で、もっと人間的です。
② 後半の「空白の3年間」が胸を締め付ける
前半のミステリー展開を経て、第七章から始まる野本貴彦の視点の回想パートが本作の白眉です。「八日目の蝉」を思わせる、血の繋がりのない親と子が過ごした濃密な時間の描写——これは読む(聴く)者の感情を揺さぶるために、前半の長い助走が必要だったのだと気づきます。
③ 「写実画」というテーマが深い
「世界から『存在』が失われていくとき、必ず写実の絵が求められる」——この言葉が物語全体のテーマを凝縮しています。絵のことを描いているようで、実は人と人の関係、命の重さ、「確かにそこにいた」という記憶のことを語っている。このテーマの重ね方が塩田武士の真骨頂だと感じました。
④ 蒼木智大さんの朗読が物語の奥行きを支えてくれた
19時間という長さを考えると、ナレーターの声質と表現力は作品体験を左右します。蒼木さんの声は感情を押し付けすぎず、でも各人物の温度はちゃんと届けてくれる。特に後半の感動的なシーンでは、過剰に泣かせにくることなく、静かに感情が積もっていく語り口が、この物語の品格にぴったりでした。
⑤ 『罪の声』が好きなら絶対に読んでほしい
同じ大日新聞の記者が主人公で、子どもが事件に巻き込まれるという共通点。でも「罪の声」が取り返しのつかない悲劇だったのに対し、本作は「救い」が確かにある。両作を続けて体験するとより深く味わえる、まさに作家の成熟と誠実さを感じる一作です。
⭐ 項目別評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリーの面白さ | ★★★★★ | 前半ミステリー×後半人間ドラマの二層構造が秀逸 |
| キャラクターの魅力 | ★★★★★ | 門田の記者魂と野本の静かな存在感が際立つ |
| Audibleとの相性 | ★★★★★ | 感情の転換が声でさらに深く伝わる |
| ナレーションの質 | ★★★★★ | 19時間を飽きさせない表現力と安定感 |
| ながら聴きのしやすさ | ★★★☆☆ | 後半の人間ドラマパートは集中して聴くのを推奨 |
| 初心者へのおすすめ度 | ★★★★☆ | ボリュームがあるためAudible慣れしてから◎ |
🙋 こんな方におすすめ
- ✅ 社会派ミステリーと感動の人間ドラマが両方好きな方
- ✅ 『罪の声』『騙し絵の牙』などの塩田武士ファンの方
- ✅ 本屋大賞受賞の話題作をAudibleで体験したい方
- ✅ 重厚で読み応えのある長編小説を求めている方
- ✅ 美術・写実画など芸術テーマに関心がある方
- ✅ じっくり腰を据えて聴ける週末に楽しめる一作を探している方
📝 まとめ
『存在のすべてを』は、ミステリーの皮を被った、人間の「存在」と「愛」の物語です。30年という時間をかけて明かされる真実は、驚愕よりも感動として胸に届きます。「この子は確かにここにいた」——そのことを言葉ではなく絵筆で証明した人たちの物語を、ぜひAudibleで耳から受け取ってみてください。
蒼木智大さんの朗読は、約19時間の旅の静かな案内人として、作品の深みをさりげなく支えてくれます。ミステリーの謎解きから感動の結末まで、最後まで聴き続けたくなる一作です。
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🎧 Audibleで『存在のすべてを』を聴く
📚 塩田武士のAudible人気作もチェック
- 罪の声——グリコ森永事件をモデルにした社会派ミステリーの傑作。映画化作品。
- 騙し絵の牙——俳優・大泉洋に当て書きした出版業界ミステリー。映画化作品。
投稿日:2026年5月 / 著者:ひより


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