『木挽町のあだ討ち』あらすじと感想|直木賞・山本周五郎賞W受賞作を6人の豪華声優のリレー朗読で聴く
著者:永井紗耶子/ナレーター:関智一・安元洋貴・野島健児・三石琴乃・小西克幸・小林千晃/出版社:新潮社(Audible版:Audible Studios)
こんにちは、ひよりです。今回ご紹介するのは、永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』。
第169回直木賞と第36回山本周五郎賞をダブル受賞した、江戸の芝居小屋を舞台にした時代ミステリーです。
全六幕、それぞれ異なる豪華声優陣がリレー形式で朗読するという贅沢な作りに、通勤中に聴いていたはずが、まるで舞台を観ているかのような没入感に何度も足を止めてしまいました。
6人のナレーターの表現力とあわせて、じっくりレビューしていきます。
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木挽町のあだ討ち
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『木挽町のあだ討ち』のあらすじ
ある雪の降る夜、木挽町の芝居小屋「森田座」のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられました。父・伊納清左衛門を殺めた下男・作兵衛を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は、たくさんの人々から賞賛され、木挽町の語り草となります。
それから2年後、菊之助の縁者だという一人の侍が、仇討ちの詳細を尋ねに森田座を訪れます。木戸芸者、立師、衣装係、小道具、戯作者……仇討ちの現場に居合わせた人々が、自身の来し方を織り交ぜながら「木挽町のあだ討ち」の顛末を語っていきます。各幕で語り手が変わり、それぞれの証言が積み重なっていくうちに、やがて驚くべき真相が浮かび上がってくる——という構成です。
全六幕すべてが登場人物の台詞のみで進む、かなり珍しい形式の時代小説。江戸の芝居小屋という「様々な出自のフリーランスたちが集う、江戸のクリエーティブ空間」(著者・永井さんの言葉)を舞台に、仇討ちというシステムそのものへの問いかけも込められた、令和の時代に読まれるべき一冊です。2025年には歌舞伎舞台化、2026年には柄本佑さん・渡辺謙さん主演で映画化もされました。
ひよりの感想
正直に言うと、最初は「全編セリフのみ」という珍しい形式に、少し身構えました。ですが、章ごとにナレーターが交代する構成のおかげで、まるで舞台の場面転換を見ているかのような感覚で、するすると物語に引き込まれていきました。通勤中に聴いていたのですが、次の幕への切り替わりが待ち遠しくて、気づけば駅に着いても聴き続けてしまう日もありました。
芝居小屋に生きる人々それぞれの人生が、仇討ちの証言と絡み合いながら語られていく構成が本当に見事です。単なる復讐劇の謎解きにとどまらず、木戸芸者や立師、衣装係——普段は光の当たらない人々の喜びや哀しみが鮮明に浮かび上がってくるところに、深く胸を打たれました。
そして最終幕で明らかになる真相。タイトルの「あだ討ち」がひらがなである理由に気づいた瞬間の驚きは、ぜひ多くの方に体験していただきたいです。武士の理屈だけでは割り切れない人の情けの深さに、思わず涙腺がゆるんでしまいました。
ながら読書ポイント
全六幕、それぞれ独立した語り手による構成なので、1幕ずつ区切って聴き進めやすい作品です。ナレーターの交代が「次の幕への切り替わり」の目印にもなるので、通勤や休憩中の「ながら読書」にもぴったりです。
著者・永井紗耶子さんのプロフィール
| 生年 | 1977年生まれ |
| 出身 | 神奈川県 |
| 出身大学 | 慶應義塾大学文学部 |
| 前職 | 新聞記者を経てフリーランスライターに |
| デビュー | 2010年『絡繰り心中』で小学館文庫小説賞を受賞しデビュー |
| 主な受賞歴 | 細谷正充賞・本屋が選ぶ時代小説大賞・新田次郎文学賞(『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』)/第36回山本周五郎賞・第169回直木賞(『木挽町のあだ討ち』) |
| 主な作品 | 『絡繰り心中』『商う狼』『女人入眼』(第167回直木賞候補)『木挽町のあだ討ち』『とわの文様』など |
永井紗耶子さんは、新聞記者・フリーランスライターを経て2010年に小説家としてデビューした神奈川県出身の作家です。『商う狼』で新田次郎文学賞など三冠を獲得し、『女人入眼』が直木賞候補となるなど、着実に評価を高めてきました。
そして2023年、『木挽町のあだ討ち』で第169回直木賞と第36回山本周五郎賞をダブル受賞。このダブル受賞は史上3人目という快挙でした。歌舞伎や演劇を長年見てきた永井さん自身の経験が、芝居小屋の緻密な描写に活かされており、選考委員からも「技巧的で一言一句読み飛ばせない、繊細なもの」と高く評価されています。
6人のナレーターのプロフィール
本作のAudible版は、全六幕それぞれを異なる声優が担当する「リレー朗読」という贅沢な企画。第一幕から順に、6人の実力派声優陣をご紹介します。
| 関智一さん(第一幕) | 1972年9月8日生まれ/東京都江東区出身/アトミックモンキー所属 |
| 安元洋貴さん(第二幕) | 1977年3月16日生まれ/山口県防府市出身/シグマ・セブン所属 |
| 野島健児さん(第三幕) | 1976年3月16日生まれ/東京都出身/青二プロダクション所属 |
| 三石琴乃さん(第四幕) | 1967年12月8日生まれ/埼玉県戸田市出身・東京都育ち/フリー |
| 小西克幸さん(第五幕) | 1973年4月21日生まれ/和歌山県和歌山市出身/賢プロダクション所属 |
| 小林千晃さん(終幕) | 1994年6月4日生まれ/神奈川県横浜市出身/大沢事務所所属 |
第一幕を担当する関智一さんは、『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけ役などで知られるベテラン声優。本作について「様々な角度から様々な視点で物事を捉えた人間模様が描かれた面白い作品」とコメントしており、物語全体の導入を貫禄たっぷりに語ります。
第二幕の安元洋貴さんは立師・与三郎を渋い声で演じ、第三幕の野島健児さんは衣装係で女形でもある蛍を艶っぽく表現。ベテランの三石琴乃さん、小西克幸さんが続く第四幕・第五幕でそれぞれの人物にリアリティを与え、最も若手の小林千晃さんが終幕を締めくくります。「永井さんがこの人物はこの声優さんで、と指名したのかと思うほど」と評されるほど、それぞれの声がキャラクターにぴたりとはまっているのが本作の大きな魅力です。
よくある質問
Q. 『木挽町のあだ討ち』はどんな作品ですか?
江戸の芝居小屋を舞台に、ある仇討ち事件の真相を、目撃者たちの証言を通して明らかにしていく時代ミステリーです。第169回直木賞と第36回山本周五郎賞をダブル受賞しました。
Q. なぜ6人ものナレーターが登場するのですか?
原作が全六幕、それぞれ異なる語り手による構成になっているため、Audible版でも各幕を異なる声優が担当するリレー朗読という企画になっています。
Q. 「ながら読書」向きの作品ですか?
各幕が独立した語り手による構成のため区切りが分かりやすく、通勤や休憩中に1幕ずつ聴き進めやすい作品です。
Q. Audible版のナレーターは誰ですか?
関智一さん、安元洋貴さん、野島健児さん、三石琴乃さん、小西克幸さん、小林千晃さんの6名が、幕ごとにリレー形式で朗読を担当しています。
まとめ
『木挽町のあだ討ち』は、江戸の芝居小屋に生きる人々の人生を通して仇討ちの真相に迫る、直木賞・山本周五郎賞W受賞の傑作。6人の豪華声優陣によるリレー朗読が、まるで舞台を観ているかのような臨場感を届けてくれます。ぜひ「ながら読書」でその世界観を体験してみてください。


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