関東大震災から2年後の大正14年。東京・上野の片隅にある小さなカフェーに、今日も女たちが集まってくる。
41歳でカルチャーセンターの小説教室に通い始め、56歳で直木賞を受賞——嶋津輝の遅咲きの物語は、大正から昭和を生きた女たちの物語と深く響き合います。『カフェーの帰り道』は、第174回直木三十五賞を満場一致で受賞した、「温かくて幸せな読書時間」と読者が絶賛する傑作連作短編集です。
Audible版のナレーターは、Arts Union所属のナレーター・かわい凛香さん。2026年3月27日より配信開始された本作を、「しっとりと柔らかい表現」が持ち味の声で、大正・昭和の上野の空気ごと届けてくれます。
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カフェーの帰り道
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📚 作品の基本情報
- タイトル:カフェーの帰り道
- 著者:嶋津輝
- ナレーター:かわい凛香
- 出版社:東京創元社
- ジャンル:連作短編集・歴史小説・女性文学
- 受賞歴:第174回直木三十五賞受賞(2026年1月14日・満場一致)
- 原作刊行:2025年11月
- Audible配信日:2026年3月27日
📖 あらすじ
舞台は東京・上野の片隅にある「カフェー西行」——あまり流行っていない、食堂や喫茶も兼ねた、近隣住民の憩いの場です。「カフェー」とは当時の言葉で、現代のカフェとは異なり、女性の接客係(女給)がいる社交的な飲食店のこと。竹久夢二のポスターが飾られ、モボ・モガが闊歩する大正モダンの空気と、下町の人情が混ざり合う場所です。
物語は関東大震災から2年後の大正14年(1925年)に始まり、昭和初期・戦中・戦後へと、カフェー西行を舞台に時代をまたいで進んでいく連作短編集です。主役は毎話異なる女給たち——
- タイ子——竹久夢二風の化粧で客の注目を集める女給。その美しさの裏に隠された事情とは。
- セイ——小説修業が上手くいかず焦っている女給。「いつか作家になる」という夢を抱えて今日もカウンターの向こうに立つ。
- 美登里——嘘つきだが面倒見のいい、頼れる姐さん女給。
- 園子——大胆な嘘で美登里を驚かせた、年上の新米女給。
彼女たちはそれぞれの事情と夢と迷いを抱えながら、カフェー西行で朗らかに働き、やがてそれぞれの道を見つけて去っていきます。大正から昭和、戦前から戦後へと時代は移り、日本は大きく変わっていく。しかしカフェー西行は変わらずそこにある——。
「百年前のわたしたちの物語」というサブタイトルが示すとおり、時代は違えど、女性たちが抱える感情と選択は、今も変わらず共鳴し続けます。色彩豊かな文章——朽葉色、桜色、小豆色、藤鼠色、瑠璃紺、海老茶……登場する和の色名の数々が、大正・昭和の視覚的なイメージを読者の頭の中に鮮やかに浮かび上がらせます。
✍️ 著者プロフィール:嶋津輝
嶋津輝(しまづ・てる)さんは1969年、東京都荒川区生まれの小説家です。日本大学法学部を卒業後、投資会社に勤務。法律とは無縁に思えるこの経歴が、後に「人間の葛藤と倫理観」を描く作家の眼差しを育てていきます。
転機は2011年頃、リーマン・ショックの影響で仕事が減ったことをきっかけに、41歳でカルチャーセンターの小説教室に通い始めたことでした。純文学系の新人賞で最終候補を経験した後、2016年に「姉といもうと」で第96回オール讀物新人賞を受賞。この作品は、直木賞受賞後に林芙美子・平塚らいてうへの深いリスペクトが感じられると評されています。
- 2016年「姉といもうと」で第96回オール讀物新人賞受賞
- 2019年「スナック墓場」(文庫化にあたり『駐車場のねこ』と改題)で書籍デビュー
- 2023年「襷がけの二人」で第170回直木賞候補
- 2026年1月「カフェーの帰り道」で第174回直木三十五賞受賞——満場一致
受賞当時56歳。記者会見で嶋津さんは「40代で小説という新しい世界に入り、感情の起伏がとても激しくなりました。『今が青春だな』と感じることが多くて、本当に面白い人生だなと思います」と語りました。日本大学の直木賞受賞者としては、林真理子さん以来約40年ぶりという快挙でもあります。
「哀愁と優しさが同居する文体」と評される嶋津作品の特徴は、大正・昭和という時代設定の中でも変わりません。人物一人ひとりの「息づかい」まで伝わる精緻な人物描写と、色彩豊かな情景描写が、物語の世界に読者をしっとりと引き込みます。
🎙️ ナレータープロフィール:かわい凛香
かわい凛香さんは、Arts Union所属のナレーターです。企業系PVを中心に活躍しており、「可愛い系の声質で、しっとりと柔らかい表現が得意」という持ち味を持ちます。ナレーションのスタイルとしては「アナウンサー系(ストレート・ナレーション)」と「しっとり柔らかい系」の両方を得意としています。
本作のAudible版についてAudible公式プレスリリースは「かわい凛香さんの朗読が、女給たちの感情の機微や会話のリズムを繊細にすくい上げ、当時の空気や街の気配を立ち上がらせる。まるでカフェー西行に足を踏み入れ、登場人物とともに同じ時代を生きているかのような没入感を味わえる」と述べており、Audible本体もそのナレーションの質に高い評価を与えています。
大正・昭和という時代を生きた女性たちを描いた連作短編という難しい作品に対して、各話の主役となる女給——タイ子、セイ、美登里、園子——それぞれの個性と年代と感情を丁寧に演じ分けながら、「しっとりと柔らかい」語り口で物語全体の雰囲気を守り抜いています。
🎧 Audibleで聴くポイント
◆ 「色彩豊かな文章」が声で立ち上がる
朽葉色、桜色、小豆色、藤鼠色、瑠璃紺……本作には和の色名が随所に登場します。文字で読んでいると各色のイメージを手がかりに情景を頭に描く楽しさがありますが、Audibleではかわい凛香さんの柔らかい声がこれらの色名を読み上げるとき、音のリズムとともに大正・昭和の上野の街が耳の中に浮かび上がる独特の体験ができます。
◆ 連作短編の構成でながら聴きに最適
各話は独立した物語として完結しており、主役の女給が毎話入れ替わります。通勤・家事のながら聴きで1話ずつ区切りよく楽しめます。ただし時代は大正14年から戦後まで続いており、カフェー西行という場所と、時折登場する人物がつながっていくので、できれば順番に聴き進めるのがおすすめです。
◆ 「百年前のわたしたち」という普遍的なテーマを耳で受け取る
大正・昭和の女給という特殊な職業・時代を描きながら、彼女たちが抱える「夢と現実のはざまで生きること」「自分の道を見つけること」「人を愛すること」は100年経った今も変わらない。そのテーマの普遍性が、かわい凛香さんの現代的でありながらも品のある語り口を通じて、すっと今の自分に届いてきます。
◆ 直木賞受賞直後の配信——文学史に残る作品をリアルタイムで体験
2026年1月に直木賞受賞が発表され、3月27日からAudible配信開始という、まさに受賞直後のタイミングでリアルタイムに体験できる作品です。「直木賞受賞作をAudibleで」という楽しみ方の醍醐味が、本作ではとりわけ活かせます。
💬 ひよりの感想
① 「カフェー」という言葉ひとつで時代に引き込まれた
「カフェー」と「カフェ」はまったく違う——この一文字の違いが持つ時代感を、嶋津輝さんの文章は丁寧に、しかも自然に描き出してくれます。大正モダンの上野という舞台設定が、あまりにもぴったりで。かわい凛香さんの声でこの「カフェー」という言葉が読み上げられた瞬間から、もう物語の時代の中にいました。
② 各話の女給の「それぞれの道」に共感した
小説家を夢見るセイ、美しさを武器に生きようとするタイ子——彼女たちの人生選択は今の自分とはまるで違うけれど、「どう生きるか」「何を大切にするか」という問いは同じです。「百年前のわたしたちの物語」というタイトルの意味が、各話を聴くごとに深くなっていきます。
③ 和の色名が耳に気持ちいい
朽葉色、藤鼠色、海老茶——これらの言葉が、かわい凛香さんの落ち着いた声で読み上げられるとき、音のリズムがとても心地よかったです。日本語の色彩語の豊かさを「聴く」という体験で改めて発見できた、Audibleならではの楽しみでした。
④ 41歳から小説を書き始めた著者の「人生の積み重ね」を感じる
嶋津輝さんが41歳から小説を書き始め、56歳で直木賞を受賞したという経歴を知ってから聴くと、各話の女給たちが「それぞれの道を見つけて去っていく」という物語の軸が、著者自身の人生とも重なって見えてきます。積み重ねてきた年月が言葉に宿っている——そんな感覚がありました。
⑤ 最終章のたばこのエピソードが忘れられない
現代では嫌われ者のたばこが、家族の絆を再確認するシンボルになる——この逆転の発想に、嶋津輝さんの「品の良いセンス」を感じました。「なぜたばこが家族の絆に?」という問いへの答えを、ぜひAudibleで確かめてみてください。
⭐ 項目別評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリーの面白さ | ★★★★★ | 百年前の女性たちの生き様が今に響く連作の力 |
| キャラクターの魅力 | ★★★★★ | 各話の女給たちが生き生きとして忘れられない |
| Audibleとの相性 | ★★★★★ | 和の色名の音の美しさが声で際立つ |
| ナレーションの質 | ★★★★★ | 「当時の空気と街の気配を立ち上がらせる」(公式評) |
| ながら聴きのしやすさ | ★★★★★ | 連作短編で1話ずつ区切りよく聴き進められる |
| 初心者へのおすすめ度 | ★★★★★ | 嶋津輝入門の一冊・直木賞受賞作体験として最高 |
🙋 こんな方におすすめ
- ✅ 大正・昭和の時代背景が好きな方
- ✅ 女性の生き方・人生の選択を描いた物語が好きな方
- ✅ 直木賞受賞作をいち早く体験したい方
- ✅ 連作短編でながら聴きを楽しみたい方
- ✅ 「遅咲きの作家」嶋津輝さんの物語に共感する方
- ✅ 温かくて幸せな読後感の作品を求めている方
📝 まとめ
『カフェーの帰り道』は、100年前の女性たちの物語でありながら、今を生きる私たちにも深く共鳴する普遍的な一冊です。「温かくて幸せな読書時間」「もっとこの物語の中にいたかった」という読者の声が示すとおり、直木賞にふさわしい豊かな読み応えがあります。
かわい凛香さんのしっとりとした朗読は、大正・昭和の上野の空気をAudibleに再現し、カフェー西行の扉を耳から開けてくれます。56歳で直木賞という「これからでも遅くない」物語を書いた著者の言葉とともに、ぜひ聴いてみてください。
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📚 嶋津輝のその他の作品
- 駐車場のねこ(旧題:スナック墓場)——書籍デビュー作。短編集。
- 襷がけの二人——第170回直木賞候補の長編。奥様と女中の物語。
投稿日:2026年5月 / 著者:ひより


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